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バンダ

バンダをお洒落に上手に育てる(前編) 〜生態と販売苗~

最近流行りの着生ランの中でも、特に人気が高く、育てる楽しみを十分に味わえるのがバンダになります。このバンダというランは、雄大に咲く鮮やかな花と気持ち良く育つ株姿が魅力的な洋ランです。

そんなバンダですが、家でぶら下げながら育てていると、根が増えずに萎れてしまったり、葉が黄色くなって落葉して枯らされてしまう方が多いのではないでしょうか?

日本ではバンダを育てるのに工夫が必要です。そのため、意外と知っている様で知らない情報も併せて、バンダの日本での管理を的確にお伝えしつつ、お洒落に楽しむやり方をご紹介いたします。

こちらのバンダのコラムは2本立てになります。前編がバンダの生態や品種、販売されている苗について。後編ではバンダの管理方法について書きたいと思っています。

この記事の目次

バンダとはどんな植物?

バンダはタイやフィリピン、ネパールなどの国に跨って分布しており、現地では高い樹木に着生しています。属名のバンダ(Vanda)は、サンスクリット語の「まとわりつく」という意味の「バンダカ」から由来しているとされています。原種は約50種類ほどあり、花形や花色は様々で香りのある種類もあります。基本的には大きく育つものが多く、大きいと1m以上になることもあります。

交配種も多く作出され、タイなどの東南アジアを中心に育種が盛んに行われています。今では色合いの豊かさと派手な花姿は、洋ランの中でも随一です。根を絡ませるのが自生しているのが本来の姿なので、その点を栽培する際に意識していただければと思います。

画像出典: 全日本蘭協会2018年11月例会より

上の画像は自生地の様子になりますが、バンダや着生ランが着いている部分から、頭上に樹木の葉が多く茂っている状況が良く分かります。明るい環境ではありますが、樹木の茂った葉がバンダに当たる直射日光を遮っており、そのために葉焼けせずにスクスク育つことが出来ます。夏場の直射日光を避けつつ、遮光された明るい環境を好みます。

 

バンダとその近縁種の紹介

Vanda coerulea

バンダを代表する原種としてセルレアがあります。この青に近い色合いが世界中の人々を魅了しています。花色は個体差が激しく、青紫色~鮮青色~薄水色まで様々です。インドやミャンマーなどの標高のやや高い地域に自生します。交配親としても多用されています。近年は実生苗が作り出されたことで、暑さにもわりと丈夫になり、寒さにも強いバンダです。

画像の個体はシブリングで育種されたセルレアの選抜花です。この花の画像は、多くのラン生産者や小売店が花見本として使用されていますが、は咲かせて撮影したのはライターの私です。ここまでこの画像が普及するとは思っていませんでしたが、感慨深いですね。。。

 

Vanda denisoniana

タイやミャンマー、ベトナムなどに自生する中型のバンダです。花色は個体による差があり、薄い黄緑色から濃黄色まで様々。バンダの中でも珍しく香りのある原種です。

この他にも、雄大な赤茶花を咲かせるサンデリアナ(Vanda sanderiana)や白赤花を咲かせるルゾニカ(Vanda luzonica)と言った原種が有名であり、それらの原種を使った交配が盛んにおこなわれ、今では200種類を超える交配種が誕生しております。

 

Vanda miniatum

タイ、ベトナム、マレーシアなどに自生する小型のバンダです。以前まではアスコセントラム属(Ascocentrum)でしたが、今ではバンダ属に統一されました。ミニアタムは、他に異名同種(シノニム)としてガライー(garayi)という名前でも販売されている場合もあります。

交配親にも多用されており、株がコンパクトで輪数が多く咲かせる交配親として重要な存在です。またそのような交配が増えてきています。

 

Seidenfadenia mitrata

バンダの近縁種で、以前はエリデス属に分類されていました。このセイデンファデニア・ミトラタも園芸店などで販売され入手しやすくなっています。こちらの育て方もバンダと同じになります。リップの赤紫色が目立ち、細かい花を無数に咲かせる華やかさは、バンダとは一味違う存在感です。葉も細長く垂れ下がるため、降ら下げた際にインテリア性が高いランとしても楽しまれています。

 

根の仕組みについて

バンダ 根

根を露出しながら育てるのは着生植物にしか出来ませんが、特にこのバンダはその代表的な植物になります。植え込み材料がない状態での管理が容易であり、鉢に植えずに育てることが楽しまれています。

バンダの根には、根から吸収された水分を外に逃がさないような特殊な仕組みが有ります。根の内部はスポンジ状で吸水する部分が多いですが、根の表面が白くコーティングされており、それが水分の蒸発を抑制しています。そのため空中でも根が萎れにくく、維持することが出来ます。

根が成長している際は、画像のように先端部分が緑色や赤色になっています。この部分は根の成長点であり、重要な部分のため、傷つけたり、折ったりしないように気を付けてください。

バンダを育てるために根はとても重要な部位になります。根を意識した管理をしていただければと思います。

 

販売されているバンダについて

バンダはどのように売られているのが多いのか、それを知っていくと育てるポイントに繋がってきます。

日本で販売されているバンダの殆どが輸入された株になります。タイや東南アジアから株が輸入され、それを日本で少し養生させてから販売されています。

生産されている東南アジアは非常に高温多湿な環境であり、バンダは雨と適度な陽射しに当たっていれば、特に何もしなくても育つ環境です。そのような環境下から日本に輸入される際の特徴は大きく3つあります。

 

①根がカットされている

東南アジアから輸入されるとき、ほとんどのバンダが根を半分程度カットされて輸入されてきます。これは輸入する際の段ボールに効率よく梱包するためです。一部根が沢山伸びたまま輸入されることもありますが、その分箱が大きくなり、非常にコストが掛かっていることが多いです。もちろん健全に良く育っている根をカットすることは生育にはよくないです。そのため、販売されているバンダは株の大きさのわりに根が適正な状態ではないことが多いです。まず日本でバンダを購入する際は、健全な根が多く生えているのかをしっかり確認しましょう。もし、購入しようとしているバンダの根が少ない場合、水やり頻度を増やしたり、空中湿度を高める工夫をしっかりと行うことが必要になります。

 

②根は生え変わる

輸入した時の根と日本で生えてきた根は形態が異なります。特に太さが大きく異なり、東南アジアでは細い根が長く伸びます。しかし日本では太い根がいくつも分枝して増えていきます。これは環境に応じてバンダが発根する根を変えているからです。そのため、輸入された時の細い根は日本に来ると半分以上が枯れてしまうことが多いです。

日本で育てる際は日本環境に順応した根を早く沢山増やすことが重要です。

 

③黒いプラスチックのバスケットで固定されている

上の画像の様に販売されている姿を目にしますが、株元に黒いカゴのようなものが付いている事が多いです。これはプラスチック製の簡易的バスケットで、苗を吊るして生産する際に、このバスケットに入れて管理をおこないます。これは生育初期に株や根をに支えるためだけで、育てる上での必要性はありません! とはいえ、株元の太い根が絡んでいますので、無理に外さなくても大丈夫です。

多くの方はこの黒いバスケットだけで、あとはぶら下げて育てられていると思いますが、日本の環境というのは自生する東南アジアに比べて特に空中湿度が足りていない状況です。温室などの環境が整っていても、バンダを水不足で枯らされる方は日本では多いです。

 

以上のバンダの現状をお知りいただいた上で、日本の環境で水分を効率よく得るためにバンダは根を大切にしっかり張らせることが何よりも重要です。

そのために一般の家庭で栽培する際に是非おこなってほしいことは

「根を張り付ける素材に植え込む」

「効率の良い水やり」

この2つになります。

 

これらのためにオススメな素材と管理方法を、次回ご紹介させていただきます。

 

↓↓ 後編はこちら ↓↓

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1991年生まれ 9歳の頃にランと出会い、栽培歴は既に20年。 多数の品評会・展示会に入賞歴、審査員経験あり。ラン栽培家として、雑誌やTVなどのメディアで活躍。 ときめくラン図鑑の著者として、ランを身近に普及する活動に取り組む。

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