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ORC MAGAZINEとは?

“らん”のイメージを変えたい

突然ですが、「サボテンってお水いらないんでしょ?」「エアプランツって部屋に置いておくだけで育つんでしょ?」こんなことを周りで聞いたことはありませんか?正直どちらも大間違いです。

当たり前ですが、サボテンもお水を与えなければ枯れますし、エアプランツも名前のように空気だけで生きていく訳がありません。らんも同様に、このような誤解、偏ったイメージを長い間持たれてきました。

お祝いのお花?値段が高い?育てるのが難しい?”らん”と聞いてこのようなイメージを持っていませんか?

たしかに胡蝶蘭はお祝いの時に送りますし、値段が高いものもあります。育てるのも、花を咲かせるのも難しいらんもいます。ただ、それはらんの一部分のそのまた一部分を見ているに過ぎません。

そんな誤解や偏ったイメージを少しでも変える為に、そして若い世代の方にも、もっとらんを身近に感じてもらう為に、ORC MAGAZINEは生まれました。

“らん”は多様性の象徴

らんを栽培していると、よく「温室が無いと育てられないんでしょ?」ということを聞かれることがあります。「らん=熱帯の植物=温室が必要」というイメージを持たれている方が多いのですがこれもまた、らんの偏ったイメージの一つでもあります。

この地球上で陸上の植物は約20万種存在していると言われています。その中でも、”らん”はラン科の植物を指しますが、名前が付けられているもので、約700属2万種が存在しています。陸上に生きる植物の実に約10%がらんということになります。これはキク科の植物と並び、最も地球上で繁栄している植物のグループなのです。

2万種という膨大な種が存在しているので、当然のように生息域もとても広範囲に及びます。北はロシア・カナダ、南はオーストラリア・南アフリカ。赤道直下の熱帯に自生する種もいれば、2000mという冷涼な高地に自生する種も存在します。確かに熱帯・亜熱帯の地域に大部分の種が集中していますが、その他にも広大な範囲の様々な環境に自分を適応させながら生きているのです。

なのでらんを栽培するために必ず温室が必要ということはありません。自宅の環境に合った種を栽培することができます。

湿った環境が好きならんもいれば、乾燥を好むらんもいます。暖かい方が調子がいいらんもいますし、涼しい方が生き生きするらんもいます。このように、生息する場所、気温、環境が種によってそれぞれ違うので、それらを全て一つにまとめて「らんはこのように栽培しなければならない」と考えることには無理があります。

らんほど多様性を持った園芸植物は他にありません。そして多様な種それぞれに適した栽培を試行錯誤していくことこそが、らん栽培の醍醐味のひとつと考えています。

“らん”は今も進化の途中

そして、らんが他の植物とは少し違った特徴に、他の樹木などに着生するらんが存在することです。

ラン科植物の全体の2割が、多くの植物と同じように地面に根を下ろし、土壌の水分や養分で生きる地生蘭で、その他の8割と大部分を締めているのが着生蘭です。

着生とは支持体となる樹木に根を這わせてしがみつき、雨水や空気中の水分を空中に張り出した根(気根)で吸収します。その吸収した水分や養分は葉や偽球茎(バルブ)に蓄える。こうして乾季など雨の降らない時期を耐えることができるのです。

どうしてこのような生き方を選んだのかというと、これにはらんの起源が関係しているのです。

ラン科の植物は約8000万年前の後期白亜紀に、らんの祖先となる植物の分化が始まりました。しかしその頃の地球の大部分には既に他の種の植物が存在しており、らんの入り込める場所は十分に無い状況でした。実はらんは植物界の中でも遅れて現れた、いわばルーキー。そこでらんは生存競争が激しい大地ではなく、他の樹木などに着生する生き方を選んだらんが現れたのです。

その他にも花に虫(ポリネーター・送粉者)の落とし穴のような袋を付けるものや、花を昆虫に擬態させるもの、強烈な匂いで虫をおびき寄せるものなど、あらゆる方法で生き抜いてきました。ラン科の植物は進化の頂点であり、今現在も8000万年前から続く進化の途中なのです。

“らん”の楽しみ方も多様

ここまで、らんは多様性の象徴のような存在で、今も進化の途中なんだという事をお伝えしましたが、少しイメージが変わったのではないでしょうか?

では実際らんを育ててみようとした場合、その育て方や楽しみ方も幅広く、多様なのです。

例えば花が好きな方は、花の大きなカトレアや、胡蝶蘭を育ててみるのもいいでしょう。他にも多肉植物が好きな方は、多肉質な葉をもつデンドロビウムも良いですし、塊根植物のように丸々太ったバルブが特徴のカタセタムやシクノデスもオススメです。また、フウランなど、とても香りの良いらんもいれば、バルボフィラムなど、ちょっと…癖のある香りを放つらんもいます。他にも花が小人の形をしたものや、お猿さんの顔をしたもの。もうとにかく膨大な種類が存在しているので、自分の好みに合ったらんが必ず見つかるはずです。

そして栽培方法も多岐にわたります。着生蘭の場合、素焼き鉢に水苔で植え込むのが一般的ですが、コルクやヘゴ板、流木に着生させると、まるで自生しているような姿で育てることができます。それを鉢にセットしたり、フックにかけて壁にぶら下げたりすれば見た目も良く、スペースも取りません。先述したように、土を必要としない着生植物ならではの楽しみ方です。

他には近年流行している、多湿環境に生息する蘭やコケなどを水槽やガラスケースで栽培するテラリウムもそのひとつです。楽しみ方も今後どんどん進化していくでしょう。

以上のように、らんは今も進化の途中であり、沢山の種類が存在します。栽培方法や楽しみ方も様々。自分の趣味嗜好に合ったもの、自宅の環境やライフスタイルに合ったものが必ずあるはずです。

ORC MAGAZINEでは、らんにあまり馴染みのない方、これかららんを育てようとしている方にとって役に立つ情報や、新たな楽しみ方の提案を常に発信していければと思っています。そして少しでも”らん”という植物を身近に感じていただければ嬉しい限りです。

 

2019年 ORC MAGAZINE

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