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Cattleya cernua

人気の手乗りカトレア「旧ソフロニティス属」の仲間たちを紹介

多種多様な洋蘭の中でも世界中で栽培されており、四大洋ランの一つにも数えられるカトレア(属)

皆さんはカトレアと聞くとどのようなイメージを持っていますか?例えば、「カラフル」「大輪」「ゴージャス」「良い香り」等々。このようなイメージを持たれている方が大半だと思います。

今回紹介するのは、そんなカトレアの中でも地味でなかなか目立つ存在ではありませんが、とっても小さな花を咲かせ、手のひらサイズの可愛いカトレア”旧ソフロニティス属”(以下ソフロ)の仲間たちです。

小型なので場所も取らないですし、温室のような特別な設備を必要としません。都市部のマンションで園芸を楽しんでおられる方にはピッタリです。個体差や花色も多様で、これらの原種を親とした交配種も数え切れないほどあります。

一度ハマってしまうと抜け出せない程の魅力が詰まったソフロの仲間たち。是非この機会に興味を持って頂けたら嬉しいです。

この記事の目次

旧ソフロニティス属とは

まずはじめに気になった方も多いと思いますが、なぜ”“と付いているかというと、現在ソフロニティス属は消滅してしまったからです。

初期は6〜7種程がソフロニティス属として記載されましたが、ラン科の分類研究が進むと、レリア属の多くの種がソフロニティス属に統合される事になりました。そこからさらに分類が見直され、ソフロニティス属のすべての種がカトレア属に移行。それに従ってソフロニティス属は消滅してしまい、今に至ります。

分類の見直しで、属の統廃合はよくあることではありますが、一度慣れ親しんだ名前で流通してしまうと、なかなかラベルなど変更できないのが実情です。またカトレア属は巨大なグループなので、その中でもある程度のまとまりを区別するのに旧属名が使われることは多々あります。日本の蘭園や趣味家の間では”ソフロ“と呼ばれて親しまれています。

そんなソフロたちですが、原産地は主にブラジル南東部からアルゼンチンに跨る大西洋に面する地域(大西洋岸森林)で、種によって異なりますが、標高の高い雲霧林や低地の木々に着生して生育している着生ランです。

すべての種に共通して大変小型のランで、草丈は大きくても5cm程度で一枚葉。花の大きさも2〜4cm程と小型です。

栽培される場合は、一般的に水苔+素焼鉢で植え付るか、這うように伸びていく種があるため、コルクなどの木に着生させて栽培されることも多いです。よくソフロは夏の暑さに弱く、栽培は難しいと聞かれます。確かに一部のソフロは暑がりますし、夏の暑さを避けたほうが良く成長するのですが、基本的な性質は強健なものが多い印象です。

それでは主な原種を紹介していきます。

※属・・・植物分類上近しい性質・特徴を持った種のグループ

主な原種紹介

 

Cattleya coccinea

C.coccinea

真っ赤な花が目を引くcoccinea (コクシネア・コッキネア)は旧ソフロニティス属を代表する原種です。

原産地はブラジルのリオデジャネイロ、サンパウロ周辺の標高700m〜1650m付近の雲霧林に生育しており、日陰の樹上や岩などに着生しています。

バルブは細長く直立し、葉元から1〜2輪の花を咲かせます。花色は赤が標準色で、フォルマに黄色(aurea/オーレア)・かぼちゃ色(abobora/アボボラ)などがあります。なんと言っても真紅の花色は美しく、数々の赤系交配種の親に使われてきました。現在は育種も進んでおり、4倍体で花弁が驚くほど幅広であったり、大きさも6cmを超えるような大輪のものまであります。

栽培に関しては夏に暑がる性質があり、涼しい環境で育てる必要があります。特に夜温は25℃以下に抑えた方がよく、涼しいクーラーの効いた部屋での栽培、もしくは夏の間だけ標高の高い土地で栽培する”山上げ”が必要です。

栽培は若干癖があって難しいとされていますが、その美しい赤い花は、世界中の愛好家を魅了しています。

 


 

Cattleya cernua

C.sernua

朱色の小さな花が可愛らしいsernua(セルヌア)です。

原産地はブラジル南部からアルゼンチンにかけての広範囲に及ぶ海岸線森林に生育していますが、ボリビアやパラグアイの内陸部でも一部生育しています。標高の低い樹上、岩などに着生しています。日光がよく当たり、通年風通しの良い場所に生育しているので乾燥にも大変強いです。

特徴は扁平なバルブとコインのような平べったい葉で、cernuaとはラテン語で「前かがみ」という名の通り、這うように成長していきます。そして葉元から2〜8輪程の花を咲かせ、花色は赤・朱色が標準色で、フォルマに黄色(aurea/オーレア)があります。

性質は強健そのもの。夏の暑さや乾燥にも強いので、初心者にも容易に栽培できる種です。また先述した通り、這うように成長していくためコルクやヘゴなどに着生させることも可能です。

Cattleya cernua

 


 

Cattleya brevipedunculata

C.brevipedunculata

玉のような丸いバルブから朱赤の花を咲かせるbrevipedunculata(ブレビペデュンクラタ)です。

原産地はブラジルのミナスジェライス州周辺の標高1200〜2000m付近の雲霧林に生育し、樹上や岩に着生しています。

花はコクシネアと似ていますが、バルブは玉のように丸く、どちらかというとセルヌアに近い印象です。花色は基本的には朱赤色で、調べてみると全体が淡い黄色のaurea/オーレアも存在するようですが、大変貴重なものだと思います。また花弁やリップに筋が入っているのも特徴的。

性質としては強健で、自生地の標高の割に夏の暑さにも強いですが、成長は遅い印象があります。

 


 

[Espírito Santo, Brazil] Cattleya wittigiana (Barb.Rodr.) Van den Berg, Neodiversity 3: 12 (2008)

C.wittigiana

ピンクの花が可愛らしいwittigiana(ウィッチギアナ)です。

原産地はブラジル南東部エスピリサント州周辺の標高700〜2000m付近の雲霧林に生育していて、樹上や岩に着生しています。

花はbrevipedunculataと似ていますが一番の特徴がその花色で、ソフロは全体的に赤朱色の花が多いですが、wittigianaはピンクの花を咲かせます。そして標準色がピンクですが、変異でalbescens(アルベッセンス/アルバに近いが、薄っすら色が入っている花色のこと)も存在し、中々お目にかかれない大変貴重なものになります。(※下に写真があります)

現在はwittigianaも育種が進み、弁幅の丸くて広いものや、4倍体の大輪の花も登場しており大変人気があります。また以前はRosea(ロゼア)という名前で流通されていましたがwittigianaに変更され、未だにRoseaの方がしっくりくるという方は少なくないと思われます。

性質はcoccineaまでいきませんが、若干夏の暑さを嫌うので、コルクやバーク片に着生させ、夏の間は頻繁に水を掛けて気化熱を利用し、株を冷やすという方法をよく用いられます。

Cattleya wittigiana

C.wittigiana fma. albescens

 

Cattleya pygmaea (Pabst) Van den Berg, Neodiversity 3: 11 (2008)

C.pygmaea

小型のソフロの中でもさらに小さいのが特徴のpygmaea(ピグメア)です。

原産地はwittigianaと同じくブラジルの南東部エスピリサント州の標高約1000m付近の雲霧林に生育しており、主に樹上で着生しています。

本種は「世界最小のカトレア」と呼ばれるほど花も株自体も大変小さい種です。サイズの違いはあれど、株姿はコクシネアと似ていて、直立した細長いバルブの葉元から1輪の花を咲かせます。大きな違いとしては、本種の開花時期にあります。先述したソフロは全て冬に咲くことが多いですが、pygmaeaの場合夏〜秋に咲くことが多いです。

性質はpygmaeaも夏の暑さを若干嫌います。そして水が好きなのでwittigianaと同じようにコルクやヘゴなどに付け、春〜夏は頻繁に水やりをしてあげるとよく育ちます。環境としては風通しが良く、ある程度湿度が高い方が生育には良いと思います。板付けにするとすぐ乾燥してしまうので、空の素焼き鉢などに入れて保湿するなどの工夫が必要です。風通しを良くすれば水槽やケース栽培にも向いています。

 


 

その他にもソフロの仲間で原種だとmantiqueiraealagoensis、acuensisなどがありますが、国内ではあまり流通することはなかったり、らん展などにも出品されることはまれなので、目にすることは多くないかもしれません。

また正式な種名ではありませんが、「riograndensis」や「bicolor」といった名前で流通しているものがあります。これらはブラジルで出回っているもので、日本にもそこそこの数が入ってきているので、度々目にすることはあるかもしれません。コクシネアの矮化種がriograndensisで、同じ種でもリップが黄色になったものがbicolor(2色の意味)という説があったり、またはriograndensisはmantiqueiraeのシノニム(異名同種)という説もありますが、詳しいことはわかりません。

※後日調べたところ(Sophronitis) bicolorは、Cattleya dichromaのシノニムのようです。

旧ソフロニティス属を使った交配種

さて次はソフロを親に使った交配種をご紹介していきます。先述したように、ソフロの中でも特にcoccineaは赤系の交配種を作り出す親として多用されてきました。膨大な数になるのでもちろん全ては紹介出来ませんが、いくつか交配種をご紹介したいと思います。

Ctt. Faikon Ball

Ctt. Faikon Ball

片親にcernua、2世代前にcoccineaを使った黄花の可愛いミニカトレアCattlianthe Faikon Ball(カトリアンセ・ファイコンボール)です。

Faikon Ballはミニカトレアよりもさらに小型のカトレア交配種とし大変人気です。

交配系統図を見ると、まず片親にCandy Ballというミニカトレアが使われていますが、こちらもcoccineaの特徴を受け継いでいて、黄花のcrispataやaurantiacaの血も入っているので、赤と黄色が混ざり合いオレンジ色のcoccineaと言えるとても美しい花です。交配の狙いとしては、この元々小型のCandy Ballをさらにコンパクトにしようと考え、より小型のcernuaをかけて作出したと想像できます。流通しているFaikon Ballはオレンジの花が多く、写真のFaikon Ballは珍しい黄花ですが、片親のcernuaにaurea(黄花)を使ったか、黄色い花を選抜したのかもしれません。

因みに交配系統図の赤文字になっているのがソフロですが、こうやって見るとFaikon Ballを産み出すために5世代中3世代もソフロが使われているということがわかります。

 


C.Lovefort Natsuko

C.Lovefort Natsuko

赤い花弁にフリルのついたリップが可愛らしいミニカトレアLovefort Natsuko(ラブフォート ナツコ)です。

 

Lovefort Natsukoはよくホームセンターや園芸店で販売されているミニカトレアで、ご存じの方もいるかもしれません。

交配系統図を見ると、先程のFaikon Ballと打って変わり、とても長い世代交配を続けられてきたことがわかりますが、よく見るとソフロを使っているのがたった2世代だけです。ただ実際花を見るとcoccineaの面影を感じますが、それはソフロ系交配種の中でも有名なBeaufortが片親に使われているからだと考えられます。Beaufortは1963年に登録されて以来、現在でも販売され続けているメジャーなミニカトレアで、Beaufortを使った交配種も沢山存在します。

このように何世代にも渡る系譜の中にソフロがたった2世代しか入っていないとしても、直近の世代にBeaufortが入っているので、coccineaの特徴が色濃く現れるということがわかります。

 


Cattleya Chester

C.Chester

coccineaとそっくりのChester(チェスター)です。

Chesterは花はもちろん草姿もcocineaとそっくりですが、交配系統図を見るとその理由がわかります。

その理由とは、先述したLovefort Natsukoの片親にも使われているBeaufortにcoccineaを”戻し交配(交配種の片親に使われている種を、またさらに次世代で掛け合わせること)を行っているからです。戻し交配をすることでChesterの75%がcoccineaの血が入っていることになります。花色は若干luteolaの黄色が入り、オレンジっぽくなり、花をはリップに若干フリルが入るのでcoccineaよりも可愛らしい印象になりますが、とてもそっくりです。

このような戻し交配を行う意図を想像すると、ランを含めた植物は交配を行うことで自分とは違う遺伝子組み合わさり、丈夫に・強健になるという性質があります。coccineaは夏の暑さは苦手ですが、交配することで暑さに耐性も付き、さらに戻し交配をすることで見た目もcoccineaとそっくりな交配種を産み出すことができるのです。

まとめ

今回は旧ソフロニティス属の原種と、それらを親に使った交配種をいくつか紹介させていただきました。

現在ベランダや室内の限られたスペースで園芸を楽しむ方が増えていますが、今回紹介したソフロの仲間たちは、そのような方々にうってつけのランだと思います。

なぜなら株自体がとても小さいので栽培する場所を取りませんし、夏の暑さを嫌う種が多い一方で、冬の寒さにはとても強いです。例えば高温性のランや、冬の寒さに弱いランを栽培しようと思ったら、温室や暖房などの設備が必要になってきますが、ソフロの場合夏の環境(特に夜温)を涼しくできれば、そういった設備は必要ありません。

またはソフロを使った交配種であれば、小型である上に原種と比べて夏の暑さにも強く、丈夫で栽培しやすい種類が沢山あります。栽培に自信のない方はまずは交配種から始めるのも良いかもしれません。

このコラムを読んで興味を持たれた方は、是非ソフロの仲間たちを育ててみてください。健気に小さな花を咲かせるその姿に必ず癒やされるはずです。

Cattleya coccinea

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