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Rupicola laelia

ブラジルの小さな宝石”ルピコラ(ロックレリア)”の誘惑

春から夏にかけて開花シーズンを迎え、ブラジル原産の岩場などに自生する小型のカトレアたちを通称「ルピコラ」や、「ロックレリア」と呼びます。丸みを帯びたバルブと小さくて可愛らしい花は素朴で、どこか山野草のような趣があります。

可愛らしい花で人気がある一方、生育のリズムを掴めずなかなか花が咲かないといった声もよく聞きます。そこで今回はルピコラの特徴、代表的な品種の紹介、栽培・管理方法などを解説しながら、キラキラと煌く宝石のようなルピコラの魅力に迫っていきたいと思います。

この記事の目次

ルピコラの特徴

ルピコラはブラジル原産の着生ランで、カトレア属に属しています。以前は旧レリア属→その後ソフロニティス属に編入され→その後属の統廃合によりソフロニティス属が消滅した結果、ソフロニティス属のランは全てカトレア属に編入されました。しかしレリア属であった時の名残から、「ロックレリア」「ルピコラスレリア」などと呼ばれ、ラベルにも属名をC.(Cattleya)ではなくL.(Laelia)で記載されているものも多く残っています。

ルピコラとはラテン語でRupis = 岩や崖+colere = 住むという意味で、この言葉通りルピコラの最大の特徴が、主に岩場や岩壁などに着生しながら生育している点です。(ロックレリアのロックも同様に「岩」の意味です)

rupicola laelia

画像協力:ベラビスタオーキッド

生息域はブラジルのミナスジェライス州を中心とした、岩山の連なる荒涼とした地域。そこで上の写真のように岩と岩の重なった場所や、窪みに生えています。

正確にいうと直接岩肌に着生しているというよりも、岩の隙間や窪みに風で砂が堆積しそこが苗床となり、枯草や苔などの有機物と雨水が溜まる事で水分や養分を得て生きています。

上の動画は2016年カトレアシンポジウムでのMiranda OrchidのFrancisco Mirandaさんによる、ブラジリアンレリアについての講演です。途中8分頃に生息分布図が出てきます。ブラジリアンレリアは4つのセクションに分かれており、その中でルピコラはParvifloraeのグループに入っています。

こちらを見る限り、Parvifloraeセクションはミナスジェライス州と、一部がお隣のバイーア州に跨って分布しています。

C.adelinae

ルピコラの株サイズは平均に5〜10cm程度と、カトレア属の中でもかなり小型の部類です。葉は単葉で直立しており、リゾーム(匍匐茎)は作らず株元から新芽が展開します。

花も大変小さく長い花茎を伸ばし、1花茎から多くて10輪程の花を付けます。花色のバリエーションはピンクや赤、オレンジや黄色など大変バラエティに富んでいます。

 

代表的な原種

ここでは蘭展、洋蘭園などでもよく見かける原種をご紹介したいと思います。

Cattleya reginae

C.raginae

raginae(レジネ)は標高1200m〜2000m付近に自生しており、草丈5cm〜10cm程で花の大きさは2cm〜3cm程。花色はピンクの花弁に黄色のリップが基本色で、フォルマでアルバや黄花が存在するようです。

花弁表面はパール質で、光が当たるとキラキラと輝きとても綺麗です。性質は強健で洋蘭園でもよく見かける代表的な原種です。

 

Cattleya ghillanyi

C.ghillanyi

ghillanyi(ギラニー)は標高1400m〜1500m付近に自生しており、草丈は10cm〜15cm程で、花の大きさは2cm〜4cm程。花色はピンクにフラメア(炎を意味し、花弁に入る筋状のクサビ模様のこと)が入るタイプを良く見かけます。その他にはフラメアが入らないタイプやアルバがあるようです。

特徴はやはり花弁に入るフラメアで、模様の入る種類は少ないので小さい花ながらとても目を引きます。

 

Cattleya milleri

C.milleri

milleri(ミレリ)は標高800m〜1300m付近に自生していて、草丈10cm〜15cm程、花の大きさは3cm〜4cm程の大きさです。花色はその殆どが赤花で、朱色に近いものやリップが黄色のものも存在するようです。

ルピコラは全般的に葉が鋭く尖っていて、直立しているものが多いですが、milleriはそれらに比べて幅広の葉を持ち、葉を広く展開させて生育しています。また長い花茎を伸ばし、多くて10輪ほどの花を付ける多花性のルピコラです。

 

flava05

C.flava

flava(フラバ)は標高800m〜1000m付近に自生しており、草丈は10cm程で、花は3cm〜4cm程の大きさです。種名のflavaとは黄色・黄金色の意味で、その名の通り花色は黄色です。

milleriと同じく長い花茎を伸ばす多花性のルピコラです。同じくルピコラのcrispataとシノニム(同種)とされています。

 

基本的な栽培・管理方法

温度

栽培温度はルピコラ全般に言えますが、寒さに強く暑さに弱い性質があります。冬の最低温度は7℃程度まで耐えられますが、10℃あれば安心です。寒さに強いので温室などの設備が無い方でも栽培できるのが良いところですね。

反対に夏はクール種と呼ぶ程暑がりませんが、夏の最高温度30℃以上は弱る可能性があるので、強めに遮光するか日陰に置くなど、置き場所を工夫する必要があるでしょう。

日光

自生地では遮蔽物があまり無い過酷な環境ではありますが、盛夏は上記のように日陰に置いたり、遮光するなどして直射日光には当てないようにしましょう。逆に冬から春にかけてはしっかりと日光に当ててください。日光が満足に当てられない場合は、補助として育成用のLEDライトなど使用すると良いでしょう。

通風

自生地は風雨にさらされる岩場に生育していますので、1年を通して風通しの良い場所で栽培しましょう。

コンポスト

コンポストに関しては栽培者それぞれのライフスタイルや環境によるので正解がありません。

ただよく岩場に生えているので、軽石などの石系のみに植えている方がいますが、それだと水はけが良すぎてうまく育たない可能性があります。自生地の写真でも見た通り、窪んで水の溜まった所に生えているので、多湿は嫌いますが、むしろ水は好きな方だと考える方が自然です。

ある程度保水し、尚且水はけも良いとなると、プラ鉢+ミックスコンポスト(軽石+バーク)や、オーソドックスに素焼き鉢+水苔がおすすめです。洋蘭園によってはプラ鉢+バークのみやプラ鉢+水苔で植えている所もあるので、ご自身で色々試して最適なものを見つけてください。

植え替え

コンポストの話と繋がるのですが、ルピコラは岩場に自生しているためか、植え込み材が酸性に偏ると、調子を崩してしまうことが多々あります。例えば水苔植えの場合、1年もするとかなり酸性に傾いてしまいます。なので水苔で植えたら1年毎にこまめに植え替えた方が鉢内のphをいいバランスで保つことができます。

ただひとつ問題があり、ルピコラは株が大きくなってから植え替えや株分けなどを行うと、ここでも調子を崩してしまうことがありますので、株の状況を見極めたり、根になるべく負担を掛けないなどの注意が必要です。

尚、植え替えの時期は盛夏を過ぎた秋に行ってください。

 

開花へのポイント”開花から逆算”

さて次は、これからルピコラを栽培したい方や、栽培しているけど中々咲かないと感じている方へ、一度試していただきたい開花へ向けた栽培のポイントです。

まずルピコラの多くは5月〜8月に開花します。しかし、秋・冬咲きのカトレアと同じように春〜秋に水やりを増やしていても中々花は咲きません。その原因が、春〜秋に水やりを増やすと、そのタイミングで新芽が出てきてしまい、開花時期に合わせて出てくるはずの新芽が出てこない、または十分に成長していないからです。

そのためバルブだけ増えていって花は咲かないというサイクルになってしまいがちです。皆さんの中にも咲かないけどバルブだけ増えているという方いらっしゃいませんか?

そこで対策として試して頂きたい方法は、開花の次のシーズンの春〜夏に向けてバルブを充実させなければいけないので、春から秋にかけて水やりを抑えます。そして暑さでバテてしまわないように、盛夏はよく風の通る日陰の涼しい場所に置いてあげましょう。

その後涼しくなってくる秋から冬にかけて徐々に水やりを増やしていき、春に新芽が出てくるように逆算して、水やりを調整していってください。

そして、それに伴って日陰に置いていた株も、日光にしっかりと当てるようにしましょう。冬は暖かい昼間だけ屋外に出して夜は家の中に取り込んだり、室内のなるべく日当たりの良い場所で栽培して、それでも日光が足りなそうなら、上でも書きましたが、補助的にLEDなどの人工照明を当ててみるのも良い方法だと思います。

そうしてしっかりと開花期に合わせて出てきた新芽の中に、花芽がきっとあるはずです。

(※ただ冬場の水やりは、なるべく午前中の暖かい時間帯に行ってください。耐寒性はありますが、冷え込む日の夜に水やりをすると、根にダメージを与えてしまいます。)

 

まとめ

成長期に当たる春〜秋に、どうしても水やりを増やして株を充実させたいと思ってしまいますが、季節でどう管理するかを考えるより、開花時期に合わせてバルブを完成させるにはどう管理すればベストかを考えるようにすると理解しやすいかもしれません。

反対に株がまだ小さく、花は咲かなくて構わないので株を大きくしたい、成長させたいという場合は、春〜秋に日光や雨にしっかりと当ててあげてください。

最後に一点注意して頂きたいのですが、ルピコラと草姿が似ているC.harpophyllaC.kautskyanaといった種類があります。ルピコラとの違いは、草丈は20〜30cmと割と大型で、バルブはぽってりとした樽型ではなく細長いです。これらの種類は岩場ではなく、湿度も高い多雨林地帯に生育しており、上記の管理方法は当てはまりませんのでご注意ください。(春咲きのカトレアと同じ管理で良いようです。)

ここまで色々とルピコラの栽培について書いてきましたが、基本的な性質そのものはどれも強健です。興味を持った方はまず栽培にチャレンジして頂き、是非その可憐で宝石のような花を楽しみましょう。

 

cattleya reginae

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