下垂した花を咲かせる不思議な着生ラン “スタンホペア”の為にDIYでバスケット作りに挑戦
転載:TOKYO PENTHOUSE
ランは植物界の中でも多種多様で、着生蘭のコルク付けの記事でも書きましたが、世界には確認されているだけで750属15,000種も存在しているようです。その中にはヘンテコな形のものや、葉が無いもの、葉脈が光って見えるもの、アリを体内に住まわせて共生するものや、猿の顔みたいな花を咲かせるものだったり本当に様々です。
何故ランは多様な種類が存在しているのかというと、どうやらこの世界にランがオギャーと生まれた時点ですでに沢山の植物たちが存在していて、そして世界のありとあらゆる場所で植物たちが根を降ろしていたみたいなんですよね。
それで初めの方は、ちょっと空いてるせまーい隙間に入り込んで、「これからどうなるかわかんないけど、俺たちここで頑張ってみるわ。」って少しずつ住める場所を決めていったんですが、それでも残ったランたちはいよいよ、「おいおいどうすんだよ。もう俺達が住める場所はねーぞ。」っつって出した答えが、他の植物や岩に”着生”する生き方なんですよね。だから世界のラン科植物の8割は着生種らしいです。(日本在来のランでは逆に8割が地生種)
その他にも先述したように、それぞれの種が手を変え品を変えしながら、「端っこで良いんで使わせて下さい」みたいな、民家の納屋を借りて寝るバックパッカーみたいな事しながら懸命に生きています。
ランは地球上にもっとも新しく生まれた植物の一つなので、今まさにランにとっては進化の途中なんですよね。これからも多様性を保っていくのか、淘汰されていくのかはわかりませんが、よっぽど無茶な生き方してるやつは当然姿を消していくでしょうね。なので我々はそんな進化の過程を目の当たりにできる面白い時代にランを栽培していると言えます。
この記事の目次
ブラーンと垂れ下がった花
そんなクセの強いランたちですが、先日ネットでたまたま存在を知ってから、どうしても育ててみたいなぁと強く思ったランがあって、それをオークションでゲットしました。
それが、「スタンホペア」です。
このスタンホペアは結構珍しく普通のお花屋さんや園芸店ではあまりお目にかかりません。その最大の特徴が、例えば殆どの植物って地面に対して垂直または上向きに花を付けるんですが、スタンホペアの場合はなんと花茎がコンポスト(植え込み材)の中を潜っていって、ズボッと底面に飛び出したら”下向き“に花を付けます。花の形も下を向く前提になっていて、鳥や蝶が羽を広げているような姿に見えます。
その為栽培する時は、普通の素焼き鉢だと花茎が鉢底に当たってしまうので、底穴をノミとか先の尖ったハンマーなどでコツコツ広げて、吊り下げて育てないといけません。
今回落札して届いた株も4号くらいの素焼き鉢で、底穴が削られて広がっていました。
いやそうしないと駄目なんで、しょうがないのですが、輸送の衝撃や、鉢自体も脆くなっていたんでしょう。底穴から亀裂が入って…
パッカーン
持ったら鉢が割れちゃいました。マイガッ!
割れちゃったものはしょうがないんで、どうしようかと考えていたら、スタンホペアは基本吊り下げて育てますが、チークバスケットと言って木の棒を組み合わせてカゴ状にしたものに植え込む場合もあります。見た目もカッコイイし、素焼き鉢と違って割れる心配もありません。それだ!と思い調べていたんですが、
これ作れるんじゃね?
とまた悪い癖が…。思い立ったら即実行ということでいつもお世話になっている島忠ホームズ略して”シマホ”にGO。
チークバスケット作り 用意するもの
構造自体は超単純です。小学生でも誰でも作れると思います。まずは用意するもの
- 木の角棒 太さ10〜12mm 数本(種類はなんでもいいです。売ってたのがケヤキだったんでケヤキにしました。)
- 針金
- ノコギリ
- 電動ドリル
- 木工用ボンド
- ※必要に応じてビスor釘
たったこれだけです。ホントどこの家庭にもあるようなものだけ。無ければホームセンターで揃えて下さい。
実際作ってみる
上の図が設計図(と言っていいかわかりませんが)です。
今回は15cm四方のバスケットにするので、まずは買ってきた木の棒を15cmを16本ノコギリで切出します。そして図の天面側の段差を無くす為に、2本の間にぴったり入る長さで2本切り出します。今回は1.2cm×1.2cmの角棒だったので、15cm-2.4cm=12.6cmの長さ2本です。
切り終えたら、15cnの棒14本の両端に電動ドリルで穴を開けていきます。図のように重ねていくので、重なった時に穴が垂直に一直線になるように開けていきます。15cmの棒2本と、短い2本には穴は開けなくて大丈夫です。
穴を開けた終えたら針金を通して積み上げていきます。
四角い筒状になったら針金の端を整えます。私は今回吊り下げる為の長い針金とバスケットを分けたかったので、先を掛けられるように天面側の端をループ状(輪っか)にしました。なぜ分けたかというと、今後吊り下げる針金の長さを買えたり、違う素材のものに交換できるようにする為です。交換する予定が無ければそのまま伸ばしていって、お好みの長さにカットして下さい。
針金を整えたら、図のように底面側一番下から2段目に2本、天面に短いの2本をくっつけて下さい。当たり前ですが、底面の2本は水苔を敷く時落ちないように入れています。もしもっと隙間を無くしたい方は3本、4本入れてみてください。天面はフラットに見えるとキレイなので、一番上の棒と棒の間に短いのを差し込みます。支障は出ないので別にいいやって人は入れなくてもいいです。付け方はビスや釘を打ってもいいですが、私は面倒くさかったので、木工用ボンドでくっつけただけです。
これで完成です!
バスケット完成&植替え
植替えも簡単で、水苔ほぐして古い根を整理しました。整理と言うか殆どの根は落としちゃいましたね。根の周りに新たな水苔をギュッと固めて付けて、バスケットにグイグイ詰め込みました。その後は足りないところに水苔を足したり、飛び出したやつを切ったりして終了です。
まとめ
今はこのバスケットに植え替えてから2〜3週間経っているんですが、環境が良くなったのか新しい根や新芽をガンガン増やしてます。ちなみに製作時間は1時間あればできちゃいます。すっごい簡単なので、今後もバスケットを買うことはたぶん無いでしょう。
今回は15cm四方でしたが、もっと小さいのを作りたければ長さを短くしてもらって、深くしたいなら段数を増やして下さい。DIYのメリットは株の大きさに合わせて好みのサイズに作れるので、そこは既製品にはない魅力です。
今回はスタンホペアというランの紹介とバスケットの作り方の解説でした。実は私あまり必要以上に肥料をあげたりしません。ホントごくたまに気が向いたらあげる程度です。それは何故かというとランの美しさは花だけじゃなく、茎や根や葉など株姿も花と同じくらい美しいと思っているので、こまめに肥料をあげて定期的に花を咲かせようとしたり考えていないんですよね。
花を咲かせるのにランはエネルギーをすごい使うだろうし、それをドーピングのように肥料をあげて株が弱ってしまっては元も子もありません。(もちろん気を付けながら上手にされている方もおられるんでしょうが、私は自信もないので無理はしません)
なのでこの子も無理はせず大事に大事に育てて、何年掛かってもいいのでいつかブラーンと垂れ下がる不思議で綺麗な花を咲かせてほしいなと願っています。