TOP
蘭友会

全国各地に存在する”洋ラン愛好会”の実態とは? -東と西の違いを比べてみよう- 後編

前編の洋ラン愛好会の歴史や大きな団体の紹介、また実在する愛好会の活動内容などをお伝えいたしました。

※まだ前編を読まれていない方は下記のリンクから↓

さて今回の後編は、前回紹介した関東と関西それぞれの愛好会の会員の方に様々な質問をぶつけ、それをQ&A方式で答えて頂きながら活動内容や会の実態をさらに踏み込んだ形でお伝えしていこうと思います。

答えて頂いた方の個人的な印象や感想も含まれていますが、それぞれの土地柄や会の雰囲気なども感じてもらえると思います。

この記事の目次

Q&Aコーナー

Q.会員の年齢層は?

関東

一番上の方で80代で、一番下の方で30代です。ただ会員の殆どの方は70代以上で、下の30代-40代との間に大きな開きがあるような状況です。

関西

一番上の方が80代なのは同じですが(90代の方もいらっしゃるかも)、下は20代の方も所属されています。

会員は60代ー70代の方が多いのですが、結構幅広くて50代40代30代も多く所属されています。

最近は、毎月30代-40代の方の入会が続いていて嬉しいです。

Q.会員の男女比は?

関東

全体では6:4で若干男性が多いです。ただ毎回例会へ参加される方の殆どが男性ですね。女性の方は家事や家庭の用事などがあるようで、毎回欠かさず参加される方はあまりいないです。

関西

全体は把握出来ていないのですが、例会に参加されている方でみると5.5:4.5くらいでやや女性が多い印象です。

ご夫婦で所属されている方や、例会にも毎回ご夫婦一緒にに参加されている方もいらっしゃいます。

ここ数か月は毎月女性の入会がありますね。

 

Q.入会する前の見学の方法は?

関東

私の場合初めの見学するまでは苦労しました…。なぜなら自宅の近くに愛好会があることは何となく知っていたのですが、特にブログやサイト、SNSのアカウント等は一切なく、市民サークルを紹介するサイトに会長の名前と事務局(前会長)の電話番号しか載っていなくて、どんな活動されているかも全くわからない状況でした。

しかし、たまたまいつもお世話になっている洋ラン園の方が、会に知り合いの方がいてその場で連絡をとってもらい、日程などを教えてもらって初めて見学をすることができました。

洋ラン園の方は、お客さんに愛好会に所属している方も多く、常日頃接しているので、大体近隣の愛好会の状況は把握しているはずです。なのでどういった方が所属しているとか、それぞれの会の特徴などを教えてもらえるので、個人的には洋ラン園の方に教えてもらったり、紹介をしてもらうことをおすすめします。

関西

私の場合は【地元+愛好会】で検索したらネットに地元愛好会のサイトが出来てきたのが最初のきっかけです。そこで春と秋に愛好会主催の蘭展が実施されている事を知り、その蘭展を毎回覗きに行くようになりました。そこで毎回愛好会の例会見学を案内されるのですが、知っている方がいない中に飛び込む勇気がなくて、5年ほど躊躇していました。

ある時、よく関西の蘭展で顔を合わせる方とゆっくりお話する機会がありました。聞けば私が毎回見学している愛好会に所属しているとのことで、次の例会に一緒に参加してみないか、とお誘いを頂きました。そこで初めて例会の見学を行いました。

一般には愛好会主催の蘭展に来られた際に例会を知り、見学申し込みをされる方が多いみたいです。

 

Q.例会の参加頻度は?

関東

入会後、基本的には毎月参加していましたが、2年程経った時に引越をして、会のある場所から結構離れてしまいました。ただ会員の皆さんとの繋がりは無くしたくないなと思ったので、会長と相談しながら引き続きお世話になることを決めました。以前よりは参加頻度は減りましたが、2〜3ヶ月に1回程参加しています。

会員の中には年に1回程しか参加していませんが、毎年更新している方もいます。

関西

季節によって偏りがあるのですが、仕事の閑散期は毎月参加をしており繁忙期は2~3カ月に1回となってしまうことがあります。

ほとんどの方は毎月参加されていますが、お久しぶりな方もいらっしゃいます。

 

Q.例会の会場への交通手段は?

関東

私は車を所有していないので、基本的には電車・バスなどの公共交通機関を利用して行っています。ただ帰りだけ、会員さんの車に乗せてもらい最寄りの駅まで送ってくれます。

例会に参加する時は出品する株を持参しなければならないので、基本的に皆さんは車で来られる方が殆どです。その中でも高齢になり免許を返上された方もいるので、出品株は小さい物以外殆ど持ってこないで参加される方もいます。ですが、あまりにも株が少ないと例会としての見栄えもあるので、できる限り持ってきた方が良いとされています。

関西

基本的には車です。ただ高速を使って行く程の距離があるため、私の場合は地元が同じ方のお宅まで車で行き、その方の車に乗り合わせて例会会場に行ってます(相乗り)。交通費も割り勘でお得です(笑)。

私の所属する会では出品株持参は必須ではないため(できればあるのが望ましい)、電車で来る方や行きは電車帰りは最寄り駅まで相乗りという方が結構いらっしゃいます。

また、私は例会の前後に仕事がある時があるため、その時は公共交通機関で参加しています。

 

Q.温室を所有していますか?

関東

私は所有していません。なので冬はカトレア類など室内にワーディアンケース(ガラスの室内温室)を設置しそこで育成しています。ベテランの会員さんはやはり温室を所有している方は多いです。ただ所有していない方もいて、寒さに強い種類に絞って栽培しているようです。

もちろん温室がないと難しい種類もありますが、私自身もそうですが温室が無くても工夫次第で色々な種類を維持できますし、今は植物育成用のLEDなどが発達して室内でも十分栽培を楽しめますので、温室を持っていないと入会できないということはありません。

関西

私も所有していません。そのため私も同じく冬はDIYしたワーディアンケースを室内に置いて育成しています。私の所属している会も関東のお話と似た感じでベテランさんは温室を所有されている方が多いですが、所有していない方も結構いらっしゃいます。

例会の前半に温室を所有していない方向けの情報交換の場である、ワーディアンケースの会という時間が設けられています。

温室所有の有無で育成品種に違いは出ますが、入会は温室所有なしでもウェルカムという感じです。

 

Q.会のルールやマナーはありますか?

関東

決まったルールなどは特にありませんが、年齢の若い方が高齢の方の荷物を運んだり、設営などの力仕事を積極的に行わなければなりません。

マナーに関して細かいところで言うと、栽培していると肥料などで鉢が汚れることがありますが、出品する際はしっかり綺麗に洗ってくるか、外側に一回り大きな鉢をかぶせて見た目が汚くならないように気をつけます。またラベルが無いと花の名前などがわからず解説や議論ができないので、ラベルはしっかり鉢に刺しておき、正式な名前で記載しておきます。

関西

私の所属している会も関東と全く同じです。決まったルールはない(と思う)のですが、【皆で協力する】【発言中はおしゃべりしない】といったような大勢の人間が集まった際に発生する最低限の人間関係のマナーと、【出品はきれいに正確に扱う】というルールがあるくらいだと思います。

ただ例会中に関しては担当制で司会者がいるため進行や何をしたらいいのかはアナウンスがありますし、設営や撤去などはベテランさんから「〇〇して~」などのお声が上がります。またマナーやルールが分からなかった時は誰かしらがサポートしてくださるので、お作法がよく分からなくても全然問題ありませんでした。

 

Q.入ったきっかけは何ですか?

関東

洋ランを始めた頃は、栽培方法もわからず何となく育てていましたが、やはり花を咲かせられなかったり枯らしてしまうことも多く、その都度ネットで情報を探してみたり、洋ラン園の方に相談してみたり、講習会などに参加していました。しかし栽培するにあたって軸となる”根拠”のようなものが欲しくて、会に参加すればそれが掴めるんじゃないかと思い、入会することを決めました。

(今となっては、そもそも明確な根拠などは存在せず、自分の経験の積み重ねが根拠に変わっていくと理解しているんですが、当時は始めから答えを得られると勘違いしていました…)

関西

私の場合は「蘭(植物)」を共通言語にリアルで話せる(聞ける)ひとと場所が欲しいなと思ったからでした。

具体的には、ただただ一日中蘭について語り合いたいんじゃー!という気持ちが爆発したから、とネットには載っていない90-00年代の集合知を知りたかった、からですね。

Q.入会してみて嬉しかった事は?

関東

やはり出品した花が褒められることです。もし会に入ってなければ花が咲いても一人で楽しんで終わりですが、咲いた花を同じ趣味を持つ方々と共有して、評価してもらえるのは愛好会ならではだと思います。

そして広い世代の方と知り合えることです。友人などは同世代が多くなってしまいがちですが、こういった趣味の世界は世代を飛び越えて交流できるので、このような機会はとても有り難いことだなと感じます。

関西

私は蘭が好きな人に会えることです。蘭が好きと言っても年齢性別スタンスが様々にある中で、会へ行けばその多種多様な方々のお話を聞けたり、話ができるのが本当に本当に楽しいです。

自分の蘭を持って行って、経験値から生み出されるより良くなるポイントを教えて頂いたりするのも楽しいですね。

他には、例会だけではなくて年に一回バス旅行があったり(遠方の蘭園を巡る)、有志でお出掛け(蘭園など)があるのも自分だけでは行けない場所に行けたりして楽しいです。また同じ地域に住んでいて気候が同じのため、季節ごとのお手入れがリアルなのもいいです。ネットや本では〇℃を切ったら〇〇を~とあっても毎年気温気候が変わっていて判断に悩むことがありますが、例会では毎月【季節の手入れ】の講習があるため、毎年の気候に合わせて今やるべきことが分かりやすく知ることが出来ます。

 

Q.入会したけど残念だったことは?

関東

会の雰囲気や人間関係などは問題ありませんが、会としてラン展に出品することもなく、講師を呼んで講習会をすることもないので、そういった点が少し残念でした。なので例会でも毎回同じ事の繰り返しになりますし、会員の皆さんもラン自体積極的に増やすことはないので、展示も毎年同じ花が出品される状況です。

もっと深い知識を身に着けたり、ラン展に出品したり、沢山の方と交流をして人脈を広げたいという方はもっと大きな団体に所属することをおすすめします。

関西

会については思った以上にアクションが盛り沢山で特に何もありません。

強いて言えば、地方あるあるですが、会場がもう少し便利な場所だったらなと思います。

免許を返納された会員さんでも来やすい場所ならいいのになと思います。

Q.愛好会に興味ある方へ向けて一言

関東

それぞれの会で特徴があるし、会員も本当に色々な方がいます。なので洋ラン栽培をしている全ての人が入会した方が良いとは思いません。しかしベテランの方の経験に基づいたアドバイスはとても参考になるし、何より先程も書きましたが、普段上の世代の方と接する機会がないので、色々な話が聞けて楽しいです。

個人的には、趣味の会は知識を深めるという以外にも、幅広い年代の方々と接することができ、自分の視野を広げるとてもいい機会だと思っています。

関西

興味はあるけど見学したら絶対入会しないといけないのでは、、と思う方もいらっしゃるかもしれませんがそんな事はないです。

見学だけで終わる方もいらっしゃいます。またあなたがもし人見知りでも共通の「好き」を持った同志なので、塩梅よく扱ってくれると思います。気になったらまずは是非とも見学をお勧めします。

いまの時代ネットには玉石混淆の情報が溢れているので、何を信じるのか選択することも難しいです。しかしながら愛好会にはご自身の経験を元に語られる方がばかりなので、とてもためになって面白いですよ。

このコラムを読んで、地元の愛好会に連絡を入れてみようと思う方がいたら、とても嬉しいです。

 

まとめ

東西の愛好会の特徴をを比較しながら紹介していきましたが、いかがでしたでしょうか?

こういった愛好会の存在意義について考えた際によく勘違いされるのが、栽培についてのアドバイスが欲しい場合、全てを購入先の洋ラン園で聞けばいいかと思う方は少なくないかもしれません。

洋ラン園の方はプロですので、日頃からランに接しており、そういった方に質問すること自体はもちろん間違ってはいませんが、洋ラン園はあくまで商売ですので歩留まりを意識し、満作よりも安定的に良苗を生産する事を重視しています。(もちろん積極的にらん展に出品したり、栽培を重視する洋ラン園も沢山あります)

なので、どうすれば花を咲かせられるか、どうすれば一年を通して維持できるかといった基本的な事は的確に答えてくれるはずです。

しかし一方で、「何十輪も咲くような大株を作りたい」「こんな難しい蘭を栽培したい」などの目標・課題のためならコストを度外視して徹底的に追求するのが趣味家です。

インターネット、SNSの普及により大概の情報は簡単に手に入ります。しかし愛好会には、受け継がれる伝統と長年積み重ねられた経験値が存在しています。もしこのコラムを読んだ方が、栽培スキルを今よりさらにレベルアップさせたいと思っているなら、愛好会に入会するのも一つの手かもしれません。また愛好会に所属する会員の方は複数の会を掛け持ちしている方も多いので、更に知見を広げたいといった方はそういったことも可能です。

どこの会でも間違いなく入会は大歓迎だと思いますので、興味を持った方は、まずは例会の見学に参加してみてはいかがでしょうか。

RECCOMEND

‘ランをもっと身近に、もっと楽しむ’をテーマにランに関する様々なコラム、ラン展などのイベント情報、ラン園やショップ情報を発信しています。もっとランが好きになるウェブマガジン「ORC MAGAZINE(オークマガジン)」