ランについて調べたい時のお役立ちリンク集
Photo by:Steve Cadman
皆さんランを栽培していると様々な疑問が湧いてきませんか?例えば、「全く同じラン同士なのに名前が違うなぁ。」「このランってどんな花が咲くんだろう?」「この交配種のルーツを知りたい。」等々。
そこで調べる方法と言ったら、インターネットで検索するのが一般的ですよね。しかしインターネット上には研究者の論文から愛好家のブログまで、様々な情報が飛び交い、何が正確な情報かはっきりしません。
そんな時に便利なのが、ラン(植物)に関する団体や組織、研究機関などのウェブサイトです。ラン科の植物は、実に約700属20,000種が存在していると言われています。その中で流通している栽培品種だけでも相当な数がある為、ランの名前や花、自生地の環境などを全て把握しておくことは不可能に近く、愛好家の方々のみならず、ランを扱うプロの蘭園の方々もこういったサイトを参考にしています。
その中で特に知っておくと便利なサイトをいくつか紹介したいと思います。
この記事の目次
組織・団体
日本洋蘭農業協同組合 / JOGA
日本洋蘭農業共同組合(以下JOGA)はラン生産者(ラン園)が加盟している組合です。JOGAのウェブサイトは役立つ情報が盛り沢山で、まずは様々な種類のランの育て方が掲載しているところ。もちろん全てのランに対応している訳ではありませんが、確実にヒントになるはずです。
その他にもJOGAに加盟しているラン園の一覧や、ラン展、即売会などのイベント情報が掲載されています。そしてDNA鑑定による植物分類上、属の統廃合が行われていますが、そのような属名の変更情報も掲載されています。
JOGAが年に一度発行しているフリーペーパー「JOGAレビュー」のバックナンバーもダウンロード可能です。ウェブサイトと同じく見所満載。
蘭友会 / JAOS
蘭友会はアマチュア栽培愛好家が組織する非営利団体です。全国各地にラン愛好家の団体がありますが、蘭友会はそれらの全国組織です。
蘭友会の詳しい活動内容は省略しますが、大体の場合月1回の例会があり、そこで情報交換や栽培指導、会員が自分の栽培した株を持ち寄り、人気投票を行なったりします。
蘭友会のウェブサイトにはその人気投票上位の株の写真が掲載されており、ベテラン愛好家が栽培した立派な株は見応え十分です。また、月に一度更新される「原種紹介」のページでは原種ランの写真と情報が掲載されていて必見。写真自体のクオリティも高く、見ているだけで飽きません。
全日本蘭協会 / AJOS
全日本蘭協会(以下:全蘭)も蘭友会と同じくアマチュア栽培愛好家の団体です。活動内容の多くも蘭友会と共通していますが、全蘭では協会が定めるラン(花)の出来を評価する審査があり、そこで一定の基準を超えると入賞花として認定を受ける事ができます。(先述の「JOGA」も同じく独自の認定制度あり)
審査は全蘭が設けた各項目の採点方式で、獲得した点数によりランクが定められています。ウェブサイトには過去の入賞花の写真が掲載されていて、審査を受ける予定があれば、株見本として参考になるでしょう。
そしてメニューに無いのでわかりづらいのですが、本橋由次さんという方の「ゆうじの栽培教室」というコーナーがあって、それが「根なしパフィオの復活のさせ方」とか「バンダの水遣りの仕方」などかなりピンポイントな情報が掲載されています。ただこちらと同じケースで悩まれている方がいたとしたら、本当に有益な情報になるでしょうし、同じものを栽培していないとしても、とても勉強になるので是非読んでみてください。特にカトレアの大株作りの方法など、初心者からは想像を超える時間と労力、テクニックが必要だとわかります。
サイトマップ→栽培 / バックナンバーで閲覧できます。
名前を調べる
Kew / World Checklist of Selected Plant Families(WCSP)
キューガーデン(キュー王立植物園/以下:Kew)はイギリスのロンドンにある王立植物園。1759年に開園し、世界で最も有名な植物園のひとつです。
Kewはこれまで約260年という歴史の中で、世界中のありとあらゆる植物を収集し、膨大な植物標本のデータベースを有しています。そのデータベースはオープンになっており、インターネットに接続できれば世界中の誰でもがアクセス可能です。こちらのWorld Checklist of Selected Plant Familiesは、調べたいランの学名を入力すると、そのランに関する情報を閲覧する事ができます。
例えば近年DNA鑑定により、種や属の分類が変更される事が多々ありますが、その際に変更前に出版された本などは以前の学名のまま記載されているので、世の中には複数の学名が存在する事になってしまいます。それを学術用語で“synonym(シノニム)”と呼びますが、その場合同じ種なのに名前が違うといった混乱が起きてしまう為、このKewのWorld Checklistでsynonymの情報を検索して、正確な学名を確認をする事ができます。また、反対に科・属と地域を選択してそこに自生する種のチェックリストを生成することも出来ます。
ちなみにサイトは全て英語ですが、翻訳ソフトなどを使いながら操作すれば全然難しくありません。
Kew / World Checklist of Selected Plant Families
交配を調べる
RHS / The International Orchid Register(サンダース・リスト)
ランはその長い栽培の歴史の中で、途方もない数の交配種が作出されてきましたが、世界中の全ての交配種を登録・記録している通称「サンダース・リスト」と呼ばれる国際的な戸籍簿があります。1895年にヘンリー・サンダー氏が交配種を登録するシステムを設立し、現在では英国王立園芸協会(RHS)が引き継ぎ、登録・管理を行っています。
このような交配登録を行うシステムが存在するのは、園芸植物の中で唯一ランのみです。しかも交配した種には作出者が品種名を名付けて登録することができるのですが、国際的な登録システムなので、一度登録された名前はもちろん全世界で通用します。
仮に自分のオリジナルの交配で育種を行おうとした場合、その組み合わせが過去にあるかを調べる時に利用するのが、こちらの「The International Orchid Register」です。データベースへアクセスし、母体となる親と花粉親になるランの名前を入力することで、すでにその組み合わせで交配されているかを検索することができます。またその反対に、交配種の名前を入力することで母体の親と花粉親や作出者の名前を逆引き検索することも可能です。
このサイトはランの育種に携わっている方以外にも、例えば交配種を栽培している方は、ランの持つ特性は親から遺伝しますので、ルーツを知る事で栽培にも役立つと思います。
そしてこちらも海外のサイトで全て英語表記ですが、簡単な英語なので利用するのに問題はないでしょう。
RHS / The International Orchid Register
画像を探す
Internet Orchid Species Photo Encyclopedia(IOSPE)
ランの花の写真を探す場合は、こちらのInternet Orchid Species Photo Encyclopedia(以下:ISOPE)が最も適しています。こちらのサイトは公的な機関の運営ではないのですが、サイトの見出しにもあるように2万種以上の原種ランの花の写真が掲載されています。流通しているランであれば、ほぼ網羅していると言っても過言ではないでしょう。
さらには写真だけではなく、自生地の標高(温度)、日照、開花時期、株のサイズなど、とても有益な情報が得られます。まさに百科事典。
先述したKewのWorld Checklistでも、関連情報のリンク集で写真を確認する場合はISOPEへ誘導していますので、情報の信頼性も高いです。変わった原種を手に入れたら、まずはこのサイトで確認する事をオススメします。
こちらも全て英語表記ですが、有難い事に情報をアイコンで表記しているので、英語が読めなくても理解できる仕組みになっています。各アイコンの意味はトップページでご確認ください。
Internet Orchid Species Photo Encyclopedia