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マツバラン

よく勘違いされる、名前が“蘭”なのにランじゃない紛らわしい植物たち+α

Photo by:Kentaro Ohno

日本の園芸文化において、植物には世界共通で使用する学名(属名+種小名)とは別に、“和名(わみょう)”というものが存在します。植物の日本独自の呼び方です。

これがなかなかの曲者で、ランとは本来ラン科の植物を指しますが、江戸・明治時代に海外から持ち込まれた珍しい植物に、“蘭”と名付けていたようで、そのおかげで“蘭”と名前が付いているにも関わらず、ラン科の植物ではないものが和名として受け継がれ、園芸品種名として現代にも残ってしまったのです。

そんなランなのにランじゃない紛らわしい植物をいくつか紹介したいと思います。

この記事の目次

君子蘭

君子蘭

Photo by:cultivar413

基本情報

和名: 君子蘭

学名: Clivia miniata

科名/属名: ヒガンバナ科 / クンシラン属

原産地: 南アフリカ

 

君子蘭はクンシラン属の常緑多年草で、正確に言うと現在流通しているものは“ウケザキクンシラン(受け咲き君子蘭)”で、受け咲き=上を向いて咲くものなのですが、本来の君子蘭は花が下向き先端しか開かないので、地味で目立たなく市場から姿を消してしまったようです。原種の君子蘭も控えめで美しいのですが…。

開花期は1月〜4月。家庭の軒先でも春先に花が咲いているのをよく見ます。

見た目は単茎種のランに似ていて、君子蘭は最もランに間違われる植物ではないでしょうか?しかしランではありませんのでご注意を。

 

鈴蘭

鈴蘭

Photo by:Paul van de Velde

基本情報

和名: 鈴蘭

学名:Convallaria majalis(ドイツスズラン)

科名/属名: キジカクシ科 / スズラン属

原産地: ヨーロッパ、アジア

 

鈴蘭は、スズラン属の多年草で、日本にもスズラン(Convallaria keiskei)は自生していますが、一般的に園芸店などで流通しているのはヨーロッパ原産のドイツスズラン(Convallaria majalis)です。それと区別するためか日本のスズランにはキミカゲソウ(君影草)という別名があり、さらに紛らわしいですね…。

ドイツスズランは葉裏に光沢があり、日本のスズランに比べて香りが強いのが特徴です。開花期は4月〜5月。春になり、スズランの近くを通りかかると甘い香りを感じます。可愛らしい見た目からは想像できませんが、毒性植物で花や根に強い毒を持っていますから、取扱には注意しましょう。

葉姿は紫蘭のような地生蘭に似ていて、花はMediocalcar decoratumに似ていますね。

 

松葉蘭

マツバラン

Photo by:Kentaro Ohno

基本情報

和名: 松葉蘭

学名: Psilotum nudum

科名/属名: マツバラン科 /マツバラン属

原産地: 日本、中国南部、世界の熱帯地域に広く分布

 

松葉蘭はマツバラン科の常緑性多年草。シダ植物で、マツバラン属で日本で唯一の種です。

松葉蘭はとても特殊な植物で、胞子体の地上部は茎のみで、根も葉も持たない植物。厳密には地下茎あり、光合成する代わりに共生する菌から栄養をもらって成長しています。

茎に見える黄色い玉のようなものは胞子嚢で、胞子を飛ばすことによって子孫を増やします。「生きている化石」と呼ばれ、原始の姿のまま何億年前と生き続けている植物なのです。そしてその風変わりな姿から、古典園芸の品種としても珍重されてきました。

葉蘭

葉蘭

Photo by:David Martin

基本情報

和名: 葉蘭

学名: Aspidistra elatior

科名/属名:キジカクシ科 /ハラン属

原産地: 日本

 

葉蘭はキジカクシ科(スズラン亜科)の常緑性多年草。葉蘭は強健で繁殖しやすく、庭の下草として重宝されています。スズランと同じキジカクシ科の仲間なので葉姿も似ています。

開花期は3月〜5月ですが、株元に小さな紫色の花を付けるので、気づかれないことも多いようです。そのこともあって、伝統的な園芸品種ですが花を楽しむというより葉姿を楽しむ品種で、斑入りなど様々な品種が産み出されました。

また原産が中国南部だと思われてきましたが、近年の調査・研究で日本の九州南部のいくつかの島が野生地だということが判明しました。

折鶴蘭

折鶴蘭

基本情報

和名: 折鶴蘭

学名:Chlorophytum comosum

科名/属名:キジカクシ科 / オリヅルラン属

原産地: 中央アフリカから南アフリカ

 

折鶴蘭はキジカクシ科の常緑性多年草。園芸種として人気で、特徴はランナーと呼ばれる花茎を伸ばし、その先に子株を付けます。そして園芸品種として流通している種は、斑入りの葉が特徴的ですが、外斑の“ソトフオリヅルラン”と、中斑の“ナカフヒロハオリズルラン”、他には葉が短い“シャムオリヅルラン”や葉が内側にカールしている“ボニー”、淡黄色の中斑が入った“シャルロット”などがあります。

開花期は6月〜9月で、ランナーの先に小さい白い花を5つ〜6つ程付けます。鉢植えでも栽培されますが、強健で繁殖しやすいので、庭のグランドカバーになることも多いです。

 

+α「 逆にラン科の植物なのに名前に”ラン”と付いていない植物」

クマガイソウ

これまで、和名に“蘭”と付いていますが”ラン”ではない植物を紹介してきました。しかし、これまた紛らわしいんですが、逆にラン科の植物なのにランと名前に付いていない植物も存在しています。そちらもいくつか紹介したいと思います。

  • 敦盛草(アツモリソウ) / Cypripedium macranthum var. speciosum
  • 熊谷草(クマガイソウ) / Cypripedium japonicum
  • 海老根(エビネ) / Calanthe discolor
  • 鷺草(サギソウ) / Habenaria radiata
  • 石斛(セッコク) / Dendrobium moniliforme
  • 朱鷺草(トキソウ) / Poggonia japonica
  • 岩千鳥(イワチドリ) / Amitostigma keiskei etc…

 

 

以上のように、学名の他に日本独自の和名という文化がありますが、和名は多くの方に広く親しまれている一方で、どうにも紛らわしい名前であることも確かです。さらに和名の他に、通名や地方での呼び方、栽培品種名など混乱してしまいます….。

もしかしたら、皆さんもこの中にも、今までランだと思って育てていたのにランじゃなかったというもの、またはその逆もあるかもしれませんので、今後混乱しないよう、ラベルに和名の他に学名を併記するなどしてはいかがでしょうか?

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