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ファレノプシス・シレリアナ

基本のキ。ランってどんな植物?まずはランの特徴や性質を知ろう。

突然ですが、「ランって育てるのが難しいんでしょ?」

ランにあまり触れたことがない人からよく耳にする言葉です。このように聞かれると答えるのがとても難しい…。

それはなぜかというと、ラン科の植物は地球上に約2万種存在していると言われています。陸上に生きる植物が約20万種と言われていますから実に10%・1割がラン科の植物なのです。地球で最も反映している植物グループのひとつと言えます。

種類もとても多様で、赤道に近い地域に生育している種もいれば、北極圏の寒い地域に生育している種もいます。熱帯雨林のような高湿度の環境に生育している種もいれば、標高の高い冷涼な環境に生育している種もいます。とにかく多種多様な種が、様々な環境に身を置き、適応しながら生きているのです。

はじめの質問に戻りますが、こういった全てのラン科植物を”ラン”と一括りにするにはかなり無理があり、もちろん栽培が難しい種もいれば、比較的家庭で栽培しやすい種もあります。

何となくランって育てるのが難しいとイメージされますが、裏を返せばこれだけの種類が存在しているので、自宅の環境に合った種や、自分の生活サイクルの中で無理なく育てられる種が必ずあるはずです。

このように、様々な種が存在するラン。特徴や性質などを少し知っておくだけで栽培のヒントになるので、ここでは基本的なことを紹介していきたいと思います。

この記事の目次

ランのふるさと

 

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ランの生育分布は南極大陸、砂漠、高山を除く北緯73度から南緯56度までの地球上の広い範囲に生息しています。熱帯は種類も多く、生育密度も高いのに対して、緯度が高くなる(寒くなる)につれて種類も少なくなり株数も少なくなります。

アジア、アメリカ、アフリカの熱帯雨林地域がランの3大自生地となっていて、中南米には約8,200種。熱帯アジアには約6800種、熱帯アフリカには約3100種が生育していると言われています。

このような分布から2つのタイプに分けられます。

①限られた地域に生育する種

殆どのランはこのタイプにあたりデンドロビウム、ファレノプシス、パフィオペディラムはアジア。カトレア、オンシジジューム、ミルトニアは中南米。アングレカム、エランギスはアフリカが故郷です。

②全地球的に分布する種

①に対して、特定の地域に限定せず広範囲に生育する種も存在し、バルボフィラム、ハべナリア、バニラなどはアジアのみならず南アメリカやアフリカにも生育しています。

ちなみに日本は東西に長い国土に、寒帯から亜熱帯という様々な気候があり、降雨量も多いことから狭い土地にしては種類は多く、88属約300種が生育しています。先述した種で言えば、日本に自生するムギランはバルボフィラム属、サギソウはハベナリア属のランです。

着生種と地生種

着生蘭と地生蘭

ランは地球のいたるところに生育している事がお解り頂けたと思います。その様々な環境に自分の身を適応させてきたランですが、その環境に適応させる過程で、自らの体の仕組みを変化させてきたのです。

ランは最も新しく地球に現れた植物グループと言われています。約8000万年前の後期白亜紀にランの祖先に当たる植物の分化が始まりました。

しかし、その時すでに地球には多くの植物が存在し、ランが生きていくには条件の悪い、限られた場所しか残っていませんでした。そのような厳しい環境に適応させる為に、着生地生という生き方を選ぶランが現れたのです。

①着生種

着生とは樹上や岩上に根を張り、自らの体をしっかりと固定させ、雨水や空気中の水分に含まれる少ない養分を厚い葉や、バルブ(偽球茎)に蓄えて生きています。ラン科植物全体の約7割が着生種で、上の分布図に見られるように、その殆どが赤道に近い熱帯地域に集中しています。

②地生種

地生とは通常の植物同じのように地面に根を張り、光合成を行っています。地面は樹上と違い水分も確保しやすいため葉が広くて薄いものが多いです。

しかし種によっては先述した通り、すでに多くの植物が存在し、いわゆる日陰の場所しか残っていない状況で、どのように日当たりの悪さをカバーしたかというと、光合成の他に土壌の中にいる”共生菌“から養分を供給してもらう方法。例えば日本に生育するシュンランの仲間のマヤランにおいては進化の中で、特定の菌からの栄養にだけに依存し、完全に光合成を行わないので緑葉がありません。そのようなランを腐生ラン(腐生植物)と呼びます。

③その他

他にもシンビジュームなど、着生と地生の中間のような性質を持つランや、湿地帯に生育するラン、土中に球根を作り、夏の間は葉を全て落とし休眠するランも存在します。(夏眠性球根ラン)

また日本に自生するランは、世界の分布とは違いおよそ7割が地生種で、3割が着生種です。着生種のセッコクは岩手県宮古市を北限とし、その属のみならず、着生蘭全てにおける北限になっています。

ランの体と各部名称

蘭の各部名称ランの体は根、茎、葉、花で構成されており、茎の種類によって大きく「単茎性種」と、「複茎性種」の2つに分けられます。

単茎性種

茎は1本のみで、芽の先に新しい葉を展開して成長する。株立ちにならない。

複茎性種

毎年新しいバルブを伸ばして、株立ちになる。


着生種の場合、根は樹木などに自分の体を固定・保持させる役割がある。また、雨水や空気中から少ない水分と養分を吸収します。その根の本体は太く、スポンジのような層に覆われています。普通の植物と比べて根の本数は少ないです。

バルブ(偽球茎、偽鱗茎)

饅頭のような形や棒状のものなど、種類によって様々な形に発達した茎を指します。バルブには水分や養分を蓄える役割があり、樹上など水分や養分が少ない過酷な環境を生きる為にあります。バルブを持たない種も多く存在します。

 ・リードバルブ

新芽、すなわち先頭のバルブのことを指します。リードバルブから花を付ける種類が多く、複茎性種の栽培にとって、とても大切な部位です。

 ・バックバルブ

リードバルブ以外のバルブのことを指します。古いバルブにはまだ養分が蓄えられており、リードバルブに養分や水分を供給する役割があるので、むやみに切り取らないようにしましょう。

光合成を行い養分を作り出します。バルブを持たず、厚い葉を持っている種は、バルブの代わりにその厚い葉に水分や養分を蓄えています。

花は左右相称で、3枚のセパル(がく弁)と2枚のペタル(花弁)、1枚のリップ(唇弁)から成り立っています。そして雌しべと雄しべが一体になったコラム(ずい柱)があり、その先端部には花粉塊がセットされています。ずい柱の下面の窪んだ箇所が雌しべで、粘液があります。花粉塊には粘着体が付いていて、ポリネーター(主に虫)の背中に花粉塊を貼り付けて受粉を手伝ってもらいます。

ランの花の最大の特徴は花びらが変化して唇状になったリップ。これはポリネーターの昆虫たちが何かしらで誘われて来た場合の着陸場として機能しています。

例えば、パフィオペディラムなどの”スリッパーオーキッド“の仲間たちは袋状に発達したリップを備えていて、そこに何かの拍子に虫が袋状のリップに落ち、這い上がろうとしますが滑ってうまく上がれません。しかしある一筋の通り道だけは毛のようなものが生えていて、その道だけは登ることができるのですが、その道の先に花粉塊がセットされています。やっとの思いで脱出した虫は知らず知らずのうちに花粉塊が体にくっつき、受粉の手助けをさせられているのです。蜜もありませんから、まさにタダ働きです。

その他にもリップがゆらゆら揺れるものや、ふわふわの毛が生えていて、その動きで虫を誘引する種などもいて、リップはランにとって子孫を残すために進化させてきたとても大切な部分なのです。

 

ランの特徴や性質などを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

ただ何となく栽培するよりも、こういった基礎的な事を学んでおくと、ひとつの指針のようなものができ、栽培の幅も広がります。是非こちらを参考にしながらラン栽培の役に立ててみてください。

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