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日本最大のランの祭典 「世界らん展 2019 -花と緑の祭典-」の概要と会場の様子を徹底レポート! <後篇>

東京ドームで開催された「世界らん展2019」の会場レポート3部構成最後の後編です。

前回の中篇では個別部門の入賞作品以外の作品、その他の審査4部門を紹介しました。後編ではゲストアーティストによる展示作品、また今回は”花と緑の祭典”というサブタイトル通りラン以外の展示もあり、そちらも紹介したいと思います。

そして皆さんお目当ての、出店業者・全国のラン園による販売ブース、その他会場全体の様子をレポートしていきたいと思います。

今回も沢山の写真、会場の見取り図と一緒に紹介していきたいと思いますので、今後の(来年開催されるかまだわかりませんが..)参考にして頂ければと思います。それではレポート後編をどうぞ。

この記事の目次

展示作品 “IKKOのオーキッドルーム”

世界らん展2019

世界らん展2019

 

こちらは世界らん展が始まる前から話題になっていた美容家「IKKO」さんの展示ブースです。今回世界らん展はじめての展示。

ドンと真ん中に真紅の胡蝶蘭が生けてあり、その脇にはご自身の着物、バックには書。その前には化粧品などの小物類が並べられていました。そしてガラスケースの中には着物の帯留めが展示されており、とにかく自分の好きなものを集めて、自分の美意識を表現しているのだとか。

展示を見ていたマダムたちは、並べられた化粧品を見て、皆さん「これお輪?お輪かと思った!」と仰っていたので、どうやら仏具に見えていたようです。笑 確かにそう言われると見えてきますね…。

 

展示作品 “フラワーアーティストの世界 ~志穂美悦子~”

世界らん展2019

世界らん展2019

IKKOさんのブースの隣はフラワーアーティストの「志穂美悦子」さんの展示作品です。

志穂美さんは2015年から5回目の展示で、見た通りとてもスケールの大きな作品を展示されていました。作品のタイトルは「煌き」。

NHK-BSで放送されていた世界らん展2019の番組でも解説されていましたが、このシャンデリアのようなオブジェは、ペットボトルのような素材を熱で溶かし、花瓶のように変形させ、そこへ水を入れて、花を生けているようです。全体を白い花、そしてアクセントに青の花を使い作品を構成されていました。

とにかく作品のスケールが大きくて圧巻です。

 

展示作品 “フラワーアーティストの世界 ~假屋崎省吾~”

世界らん展2019

世界らん展2019

大きいスケールといえばこちらも負けていません。今年で15回連続で展示している、”カーリー”こと華道家「假屋崎省吾」さんの作品です。

これは…もはや華道なのでしょうか…? カラフルで帯状のパネルを組み合わせてオブジェを作り、その下には草木や花を飾り、これまたIKKOさんに通じるんですが、とても豪華な着物を飾り付けていました。美意識が似ているというか共通する所があるんでしょうね。

この作品を通して何を伝えたいか、何を表現しているかはわかりませんが、とにかく迫力はあります。

作品はオーキッドゲート付近にあり、入場口へ階段で降りていく時も真っ先に目に飛び込んできます。辺りは何万輪というランの花が咲いているのにも関わらず、一際大きな存在感を放っていました。

 

展示 “光と花のシンフォニー”

世界らん展2019

こちらは最近流行っているデジタル技術を駆使した「光と花のシンフォニー」というタイトルの展示です。

プロジェクターや球体ディスプレイを使った映像作品なのですが、特にストーリーがあるわけでもなく、花や光などの映像が繰り返し流れているだけで、何を表現したかったのか全くわかりませんでした…。もう少し観客が参加できたり、らん展に関連した表現の方が良かったのではと思いましたね。人の入りもまばらで、実に勿体無い..。

詳細はこちら→ https://www.tokyo-dome.co.jp/orchid/special/symphony/

展示 “食虫植物と神秘的な花々”

世界らん展2019世界らん展2019

実は入場した直後は全然空いていたので、後でいいかと思って帰りがけ寄ろうとしたら、結構な行列になっていたので時間的に中に入れませんでした…。残念…。

内容だけお伝えすると、どうやら今注目されているネペンテスなど食虫植物の展示と、花弁の長さでギネス記録を持つ”パフィオペディラム・サンデリアナム“などが展示してあったようです。それと展示の目玉が、日本の企業が遺伝子組み換え技術により開発・栽培に成功した、青色LEDに反応して発光する”光るシクラメン“が世界初公開。BSの放送で実際の映像を観たんですが、たしかに茎、葉、花、蕾まで黄緑のような色に発光していました。自然光で見ると発光せずに、白花の至って普通のシクラメンみたいですね。

画像はこちら→ https://www.jacom.or.jp/saibai/news/2019/03/190301-37478.php

展示 “Japan Botanical Style ~蘭とBONSAI~”

世界らん展2019

世界らん展2019

今回の世界らん展は「花と緑の祭典」ということで、らんを中心に据えながらも新たな試みとして、シンボルロードやシンボルツリーなど、らん以外の様々な草花・植物も取り上げられていますが、その中でも特に個人的に興味のあったのが盆栽(Japan Botanical Style -蘭とBONSAI-)の展示です。

今回展示していた盆栽は、盆栽界の魔術師と呼ばれる「木村正彦」さんの盆栽でした。ご本人は内閣総理大臣賞や盆栽界の最高賞「国風賞」(らんの世界だと、まさに日本大賞なのでしょうか?)を何度も受賞されていて、さらに木村さんの元には海外からも多くの弟子志願の方が訪れ、お弟子さん自身も世界中で活躍されているという、とんでもなく凄いお方です。

世界らん展2019

全部で20点程展示していたのですが、正面にドーンと鎮座していたのは樹齢約1000年の真柏「登竜の舞」。調べてみるとこの盆栽は元総理大臣の竹下登さんが命名したのだとか。

その中のひとつ、こちらは内閣総理大臣賞を受賞した「登龍の舞」です。当時の総理大臣、竹下登氏がまだ銘がついていなかったこの盆栽を見て「命名させてくれ」ということで、登という字を入れたこの銘となったそうです。

引用: 盆栽エバンジェリストへの道 ” Road to BONSAI evangelist”

 

他にも素晴らしい盆栽の数々が展示されていましたが、確かにこのコーナーに入るとそこだけ空気が違ったように感じました。しかもここの一角だけ専門の警備員の方が…。それほど貴重なもののようです。

盆栽とは長い年月を掛けて作られる芸術作品と言えるものだと思います。そして意外と知られていないのですが、実はランも種類によっては、同じく何十年と新陳代謝を繰り返しながら生き続ける植物なのです。

ランにあまり馴染みのない方は、ランの寿命はせいぜい2~3年程と思っている方が大半なのではないでしょうか。世界らん展に出品されている大株のランも何年も掛けて作り込まれている作品なので、ランの栽培とは、お気に入りのランと長い時間を共に過ごす事ができる。ということを、もっと沢山の人たちに知ってもらえたら良いなと感じました。

ちなみにこちらの古い動画ですが、「登竜の舞」の改作して間もない姿が動画の最後の方に登場します。盆栽の栽培技術も本当に凄いです…。

販売ブース

世界らん展2019

世界らん展の楽しみといえば、もちろん展示作品を鑑賞することなんですが、同じく皆さん楽しみにしているのは日本全国、いや世界中の蘭園が一堂に会するランの即売会ですよね。

全国各地の蘭展でも合同の即売会は開催されますが、世界らん展は東京ドームで開催されますから、規模が全く違います!見取り図を見てもらうとわかるのですが、ブースの1/3は販売ブース。

日本はもとよりブラジル、ベネゼエラなどの南米の蘭園、中国や台湾やタイなどのアジアの蘭園など世界中の業者が集まります。さらに水苔や肥料メーカー、温室施工業者や鋏、鉢などを扱う資材メーカーなどのラン関連業者、合わせて約120社が集まるのはもちろん世界らん展の時だけです!

普段なかなか手にできないランを買えるのはこの時だけなので、実際の商品を選んでいる時は皆さん目の色が違います。笑

まずは沢山のブースがある中、一際賑わっていたのは切り花を販売していた「第一花壇(66)」(カッコ内の番号はブース番号です。)さんです。ランではない切り花が殆どだったのですが、最終日に近づくにつれてドンドン値下げをしていて、最終日はもう黒山の人だかり&行列ができていました。確かに4束¥1000は安い…。

それと同じく人だかりができていたのは、「椎名洋ラン園(61)」さんや、「新垣洋らん園(49)」さん、「仲里園芸(24)」さんなどの胡蝶蘭をメインの商材にしている蘭園ですね。やはりランといえば胡蝶蘭をイメージされる方が多いように、切り花を買う感覚で胡蝶蘭を買っていく方が多いようです。

写真のこの日は最終日だったのですが、最終日が近づくにつれて安くなっていき、最終的には1株¥1,000の胡蝶蘭が半額の2株で¥1,000になっていました。なんという激安。

では他の蘭園は売れていない!?…というわけではなく、ランの愛好家でもコアな層とライトな層に分かれていて、コアな層は各蘭園の販売する貴重なランの情報をいち早くキャッチしていて、内覧会(正式なオープンの前に、審査部門の表彰式を含めたプレオープンの日。一般のチケットとは違い特別招待券となっており、主に各蘭園の顧客に配られる事が多い)に参加し、一般のお客さんよりも一足先にお目当てのものを購入する傾向が強いです。

逆にライトな層は土日などの休日を利用して来場、または最終日などの安売りに合わせて来場して、胡蝶蘭などの普及種を買う傾向が強いと思います。

このような胡蝶蘭メインのブースは大きな掛け声でお客さんを呼び込んでいて、さながら市場の競りのよう。

世界らん展2019世界らん展2019

ブースの間の通路が人でごった返してますね!そして洋ランの他にも日本の蘭や東洋蘭のブース、そして海外の業者もいくつか出店しています。最終日近くになると驚異の半額セールなど行う、タイの有名なラン園「KOK KOK ORCHID(23)」さん。今回はチランジアも沢山持ってきていましたね。エクアドルの「ムンディ フローラ(69)」さんや、パキポなど塊根植物を沢山持ってきていた「フローラ オブ マダガスカル(70)」さん。写真は最終日だったんですが、すでに撤収済み。

そして今回からラン以外の植物の出店も充実。植物・お花好きが集まるコミニュティサイト“GreenSnap”が主催する植物イベント「GreenSnap Marché(81)」が世界らん展にも登場です。

GreenSnap Marchéは1週間の会期中、日によってお店が入れ替わりながら出店していて、この日は多肉植物専門の「hanasai taniku waorks」さんや、ビカクシダを中心に着生植物を販売する「necomoss」さん、そしてチランジア、ケープバルブの第一人者”藤川史雄“さんが代表を務める「SPECIES NURSERY」さんなどが出店していました。

そしてこちらも観葉植物や多肉植物、また珍しい花の苗木などを販売していた、ユニバーサル園芸が展開するガーデンセンター「the Farm UNIVERSAL(105)」。

さらにthe Farmではワークショップスペースを設けていて、日替わりでドライフラワー作りや寄せ植え作り、苔テラリウム作りや薬草講座などなど、植物に関連する様々なワークショップを体験することができます。

このようなラン以外の植物の展示や出店があるおかげで、来場する客層の幅も広く、会場全体の様子も例年の世界らん展とはまた違った雰囲気を感じることができました。

その他会場の様子

世界らん展2019世界らん展2019

こちらのカッコいい真っ赤な車は今年の日本大賞の副賞の賞品「メルセデス・ベンツ Aクラス」です。前篇でもお伝えした通り、大賞受賞者は賞金200万円の他になんとベンツまでもらえるんです!

(と言いながら栽培歴の長い方は今まで温室やランの購入など、ベンツが何台も買える程お金を掛けている方も沢山いらっしゃるんですけどね…)

入口付近に展示してあったんですが、スーツを着たシュッとした人がいるなぁと思っていたらディーラーの営業の方でした。展示車を覗いていたり、話を聞いている方が結構いたので、商品をアピールできる良い営業の場なんでしょうね。

世界らん展2019 世界らん展2019 世界らん展2019

会場内唯一の喫茶スペースKEY COFFEEが運営する「FLOWER CAFE&BAR」です。花をモチーフにしたメニューや、Barなので花を使ったカクテルなどお酒も提供しているそうです。結構歩き回りますからここで一服するのもいいでしょう。

世界らん展2019世界らん展2019

一際大きな販売ブースは「日比谷花壇 FLOWER CABIN」のブース。ランはもちろん観葉植物から多肉植物、ブーケや切り花など、全国にショップを展開する日比谷花壇ならではの充実した品揃え。

驚いたのが、特殊な染料で着色したカラフルな胡蝶蘭がありましたが、フェイクのような見た目で、あれはどうなんでしょう…?

世界らん展2019

こちらは出口の通路近くで行われていた、植え替え実演コーナーと、栽培相談のコーナーです。

植え替え実演の方は、私が見たときはには春蘭の回で、約20人程の方が見ていました。植え替えなどのテクニカルな事は、蘭友会や洋らん会に所属していると先輩にコツなど細かい所を教えてもらいながら実践できますが、独学でやられている方はこういう実際にプロの方の講習を聞ける機会はあまり無いと思うので、とても勉強になりますよね。

その隣のブースにあるのが栽培相談のコーナーです。

今日会場で買ったランの栽培方法をお店の方に聞いたけど、もう少し詳しく聞いてみたいな。とか、あまり調子が良くないランを家から持ってきたので見てもらいたいな。等々、栽培に関する疑問やアドバイスを各蘭友会・洋らん会のベテランの方に相談できるコーナーです。

実はこのような栽培相談は、世界らん展に限った事ではなく、全国各地で行われている殆どの蘭展でも行われています。ベテランの方はどんな些細なことにも優しく、丁寧に教えてくれるので、何か気になる事があったら是非相談してみると良いかもしれません。

世界らん展2019

その栽培相談コーナーの後ろ。3塁側スタンドの上の方に大きく「出口」、「休憩所」という看板が見えます。3塁側のスタンド(観客席)は開放されていて、休憩所になっています。皆さん疲れたらここで休憩したり、昼食など食事をしています。出店している業者さんも皆さんここで食事されていましたね。

2階通路には軽食の販売もあるし、休憩所入り口にはお弁当の販売もあるので、1日中いても食事には困ることは無いでしょう。もちろんコンビニなどで買ったものも持ち込み可能です。

そして展示もしっかり見たし、お目当てのランも買ったし、もう帰るだけ!という方はこちらのスタンドを登って23番ゲートが出口となりますので、そちらから退場してもらいます。

世界らん展2019

お疲れ様でした。それではまた来年。

まとめ

さて前・中・後編と3部構成での世界らん展のレポート、本当に長いことお付き合い頂きありがとうございます!如何だったでしょうか?

2日間参加をして、タイトル通り”徹底レポート“したつもりなんですが、まだまだ全てをお伝えしきれていません。これを全てお伝えしようと思ったら、果たして何百枚の写真と、何万文字必要なのか…。実際会場もとても広く、展示や販売ブースをくまなくチェックするとなると、正直1~2日じゃ足りないでしょう。

さて今年の世界らん展2019は、何度も言っていますが– 花と緑の祭典 –というサブタイトルが付いた通り、運営組織が変更され、新たな企画として、いけばなや盆栽などラン以外の植物の展示もありました。出店業者もGreenSnap Marchéをはじめ、多肉植物や塊根植物、チランジアや食虫植物など様々な種類の植物を販売。その他にも植物関連のワークショップも体験できたりと、多くの新たな試みがなされていたように思います。

演出の方でも18時以降にライトダウンされ夜市のような雰囲気になったり、入賞株が展示されていたシンボルロードやシンボルモニュメントなども例年にはない演出でしたね。こういったことから考えられるのは、

“ランだけではなく、もっと大きな「園芸」というカテゴリーを盛り上げていきましょう”

という主催者からのメッセージのように思います。

こういった変化に対してSNSをはじめ会場の声、ラン愛好家の方々の声を聞く限り、概ね賛同する声が多いように感じましたが、否定的な意見も少なからず聞きました。賛否両論あるでしょう。しかしこの変化が是か非かという次元ではもはやなく、もう当然の流れであり、止む終えない事なのです。

その証拠に関西から発信され、品種に縛られない植物イベントBORDER BREAK!はその規模をドンドン拡大していますし、その他にも同様のイベントは全国各地で行われています。

植物ジャンル指定なし!アクア 園芸 区別なし!!プロもアマチュアも関係なし!!!

植物好きによる 植物好きのための総合展示即売会

“BORDER BREAK!!”

引用:BORDER BREAK公式

こういった背景には、輸送技術の発達によって海外の植物が昔に比べて手に入りやすくなったり、栽培方法はインターネットですぐ検索でき、栽培器具の発達により特殊な環境も再現しやすくなったお陰で、一人で栽培できる品種が多様化したのです。逆に私はこの植物しか育てていません!という方は少ないのではないでしょうか?

それと同時に熱帯植物の水槽栽培や、テラリウムなど植物の楽しみ方も多様化してきていて、アクアリウムとテラリウム、テラリウムとラン、ランとアリ植物など、それぞれの領域が重なるポイントが必ず存在し、今やある領域だけが独立して存在する事自体が不自然になっているのです。

世界らん展のリニューアルも、ラン愛好家の高齢化により近年来場者の減少が理由と言われていて、もちろんそういった側面も間違いなくあるのですが、そういった事よりもこの「園芸」というカテゴリーを取り巻く流れの中で起きた必然的な変化と言えるでしょう。今ではその流れは園芸という枠では収まらず、アートやデザイン、ファッション、音楽などの分野とも融合しつつあります。

ということで、今回からリニューアルした世界らん展。良いか悪いかではなく、ORC MAGAZINEとしてはその変化も楽しむ事が大事だと考えています。

まだまだアップデートの必要な所もあるでしょう。展示内容や演出方法も見直す所があるでしょう。そしてらん展として核となる部分はしっかりと守りつつ、今後総合的な園芸イベントへと進化、そして末永く継続していくことを心から願っています。

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