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ラベル

ラベルを見ればランのルーツや受賞歴が一目でわかる。ラベルの読み方・書き方を解説

ランを購入した時についてくるラベル(札)。片面は主に購入したナーセリー(ラン園)やお店の名前・住所などが記載されていて、裏側にはランの名前の他に、何やら沢山の記号が記載されていますよね?

そんなラベル、紛失してしまったり、どれがどれかわからなくなってしまったり、何と書いてあるかよくわからないからと、捨ててしまったりしていませんか?このラベルはランにとって、とーっても大事なものなので大切に保管しておきましょう。

この記事の目次

ランの戸籍簿

まずランは“原種”“交配種”に分けられていて、原種とは野生種のことで、交配種とは、この種とこの種を掛け合わせてみよう。といったように、人工的に作り出された種類のことです。原種同士を掛け合わせたものや、もちろん交配種同士を掛け合わせたものもあります。

そしてランには“戸籍簿”があるとご存知でしたか?ランには交配種を登録・記録する国際的な戸籍簿「サンダース・リスト」があります。1895年にヘンリー・サンダー氏が交配種を登録するシステムを設立し、現在では英国王立園芸協会(RHS)が引き継ぎ、登録・管理を行っています。

英国王立園芸協会(RHS)サンダース・リスト検索ページ

このサンダーズ・リストに登録された名前は全世界で通用し、リストから両親、祖父母はもちろん交配元の原種までさかのぼり、ルーツを調べることができます。このような交配記録のシステムはラン以外に存在していません。

そして仮にあなたが、新らたな交配で育てたランがある場合、すでに同じ交配がないか検索し、登録されてなければ登録・申請することも、もちろん可能です。(有料)

ランにはこのようなシステムがあるおかげで、今まで沢山の栽培家から膨大な数の交配種が作り出されてきました。なのでよほど特徴的な形や色ではない限り、一見して種を特定することはとても困難です。もしラベルをなくして、名前も覚えていない場合「またお店で聞けばいいか。」と考えていても、特定できる可能性は半々でしょう。

ラベルがとても大切な理由がわかっていただけたでしょうか?

ラベルの読み方・書き方

実際のラベルの記入法について見てみましょう。

下の図はラベルの記入例ですが、原種の場合と交配種の場合では記入法も違います。原種はCattleya nobilior(カトレヤ・ノビリオール)を例にしました。属名は主に略号(後に解説)で記入されている事が多いですが、フルスペルで記入されていても同じ意味です。

また印刷の場合、属名はイタリック(斜体)で記入されていて、種小名は原種の場合はイタリックで、書き出しは小文字。交配種の場合は活字体で、書き出しは大文字になります。その他のルールは下の図を参考にしてください。

そして間違われやすいのが、「個体名」です。これは実生苗を栽培していて、花の大きさが標準的なサイズよりも大きいものだったり、花の形が均整の取れたものだったり、いわゆる“良花”が誕生した場合に、株自体に名前(ニックネーム)を付けたものです。この名前自体は流通する時に株を識別するものなので、交配名のようにどこかの機関に登録するようなものではありません。個体名は良花の証になりますから、同じ品種でもその個体名が付いているだけで価格が何倍も違う場合があります。そういった点からも、ラベルがいかに重要かおわかり頂けると思います。

※写真は拡大できます。

記号の意味

上の図を見ていただければ、ラベルの記入方法や、書かれている内容がなんとなく理解できたかと思います。しかし上の図に書かれている例は、ほんのごく一部。

他にも沢山の名称や記号を組み合わせることでそのランの持つ情報を表しています。下の表に代表的な略号、名称、記号を記載しました。

 – 属名の略号(主なもの) –

Ascda.アスコセンダ
Bc.ブラッソカトレヤ
B.ブラサボラ
C.カトレヤ
Blc.ブラッソレリオカトレヤ
Cym.シンビジウム
Coel.セロジネ
Epi.エピデンドラム
Den.デンドロビウム
Lc.レリオカトレア
L.レリア
Onc.オンシジウム
Lyc.リカステ
Paph.パフィオペディラム
Phal.ファレノプシス
Rhy.リンコスティリス
V.バンダ
Z.ジゴペタルム

 – 賞を表す記号 –

FCC通常90点以上
AM通常80~90点
HCC・PC 通常75~79点
GM ゴールドメダル(FCCに相当)
SM シルバーメダル(AMに相当)
BM ブロンズメダル(HCCに相当)
CBM・BC 珍しい原種で価値の高いもの

 – 主な団体名の略号(海外) –

RHS英国王立園芸協会
AOSアメリカ蘭協会
OSROC中華民国蘭協会(台湾)
HOSホノルル蘭協会(アメリカ)
CSAアメリカシンビジウム協会
WOC世界ラン会議

 – 主な団体名の略号(日本) –

JOGA日本蘭農業協同組合
JOS日本蘭協会
AJOS全日本蘭協会
JGP世界らん展日本大賞

 – 花色に関する名称 –

alba(アルバ) /  一般的に「純白花」を表す言葉として使用されているが、正確には標準色に対して色素が透けている状態の花のこと
semialba(セミアルバ) / 「白弁赤リップ」の花を意味することが多いが、本来はリップ以外の花弁・萼片が花裏も含めて白ければ「セミアルバ」とする
coerulea(セルレア) / 全体が青紫の花。自然界では最も珍しい色彩変化とされている
concolor(コンカラー) / 本来の意味は「一色」。花弁もリップも全て同じ色
tipo(チポ) / 「標準色」を意味していて、特に記載していない事が多い

 – 栽培・繁殖に関する用語 –

BS(ビーエス) / 開花サイズ(Blooming Size)の略。花の咲いている株ではなく、開花可能なサイズにまで成長した株のこと
実生苗(ミショウナエ) / 文字通り実から生まれた苗のこと。種付けをし、実った鞘の中に出来た種を蒔いて生まれた苗
MC(メリクロン) / 成長点培養によって、同じ形質の株を大量に増やした株のこと。クローン。基本的に親株と同様の花が咲く
OG(オリジナル) / Original(オリジナル)の略。親株から株分けして増やされた株のこと。親と全く同じ形質を持つので、本物としての価値が高い
× self(セルフ) / 同種内同個体実生(同じ株同士で受粉させる)。親株の形質を受け継ぐ子供が生まれやすい繁殖方法。変異個体など個体数が少ないものを殖やす場合に多く用いられる
× sib(シブリング) / 同種内異個体実生(同じ品種だけど違う株同士で受粉させる)。親株を上回る品質の個体を作りだす為、別の個体の花粉を用いて繁殖させる方法

以上の事を踏まえ、すでにお持ちのランのラベルを確認してみてください。もしくは購入しようと考えているランのラベルをこの記事を参考にして確認してみましょう。ラベルを見るだけでそのランのルーツや、ラン展での受賞歴もわかりますし、花が咲く前の株でもなんとなくの花の形や色を想像することもできます。

初めに書いたようにラベルはランの持っている情報を証明する唯一のものなので、失くさないように大切に保管しておきましょう。

 

洋ラン略号・記号早見表カード

この度上のリストをスマホサイズのカード(画像)にしてみました。

使い方は下のボタンから画像ファイルを表示し、スマホ本体に保存。ランを購入する時はこちらのカードを参考にしてみてください。

 

 

※画像の無断転載、個人利用以外での使用、2次配布を固く禁じます。また、こちらの情報を使用し、起きた事象に関して当方は一切の責任を負わない事をご了承ください。
参考資料
JOGAレビュー / No.23、No.25
NHK出版 / 別冊NHK趣味の園芸 ラン 初めて育てる

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