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栽培に必要な資材たち。植え込み材料(コンポスト)と鉢の関係。-前編-

ランを栽培する際に必要不可欠な存在である植え込み材料(以下 コンポスト)、または着生材

今回はコンポストと鉢、着生材の主な種類とその特性を2回に分けて紹介していきたいと思います。前編は「コンポスト編」後編は「鉢・着生材編」です。

コンポストは、多くの植物にとっての用土に近い存在ですが、ランにとって自分の身体を支えるため、または水分や養分を保持するためのとても大切な資材です。特に多くのランは着生植物で、少ない水分でも生育するため、利用できる資材の幅が広く、これまで様々なコンポストがナーセリーや栽培家たちによって試されてきました。

ランの種類によって適切なコンポストを選定する事はもちろん、ひいてはご自身の栽培環境や生活のリズムも考慮する必要があります。そこで代表的なコンポストを4種類と、その他にもいくつかをピックアップしています。

この記事の目次

水苔

水苔

水苔は、日本で最もポピュラーで、最も使用されているコンポスト。

水苔は湿地に生育するコケの一種で、世界中で生育していますが、主な産地はニュージーランドです。流通している水苔の殆どが乾燥処理をしていて、使用する際は水で戻してから使用します。

水苔の特徴は、水を含んだ時の保水性の良さと、乾燥した時の通気性の高さにあります。また、水を含むと膨張し、乾燥すると隙間ができるので、そこへ伸びた根が入り込む事で“根張り”が良くなります。

さらに、植え込む固さによって保水量を調整できます。固く植え込むと水を弾き、柔らかく植え込むと水を沢山吸収してくれます。そして鉢を素焼鉢にするのか、プラスチック鉢にするのか。その組み合わせによっても細やかな水分調整が可能となります。

ph値も4.8~5程度の弱酸性なので、特にph調整せずそのまま植え込む事ができるのもメリット。

一方デメリットは、メリットでもあった保水性の高さによって、初夏の時期など急激に温度が高くなってしまった場合、鉢内が蒸されてしまい、根に大きなダメージを負ってしまいます。その逆に晩秋など急激に寒くなる季節もそうです。保水力が高いゆえに急激な温度の変化に対応できないのが難点。また、水苔は使っていくうちに劣化していくので、定期的に植え替えが必要です。有機肥料など置肥をしていると藻が発生しやすく、そのうち段々と黒ずんできますので、そうなったら植え替え時でしょう。

ちなみに水苔はA〜AAAAA(5A)までグレードがあって、グレードが上がるほど値段も高くなります。生育している水苔は、長い茎を伸ばして這うように成長しますが、グレードはその水苔の”長さ“によって決まります。

なぜ長さで決まるかというと、ランは植え込む時に根を水苔で巻くように包むのですが、それが長ければ長いほど巻きやすく、それがボソボソと短いものしかなかったら、団子状で鉢に詰め込むことになり、密度もムラになってしまいます。古典園芸の富貴蘭は特に顕著で、表面に巻く「化粧苔」は5Aの上を行く30cm〜50cmもの長さの水苔を使っています。それほど長いものは採れる数も少ないので大変高価です。尚グレード分けは長さだけではなく枝や草などの不純物の少なさにも比例するようなので、できるだけAAA以上の物を使うことをおすすめします。

 

バークチップ

バークチップ(以下:バーク)とは赤松や黒松の樹皮を破砕した園芸資材です。木材自体を破砕したものはウッドチップと呼ばれています。バークは樹木や観葉植物のマルチング(主に寒さ対策などで、根本の用土表面に敷き詰めること)に使用されるなど、ランに限らず幅広く利用される資材の一つです。

ランに使用するバークの特徴としては、何と言ってもその水はけの良さと、通気性の良さにあります。水苔の場合先述した通り、保水性が高い故に急激な温度変化に対応できませんが、バークであれば水はけが良いため、潅水の頻度は高くなりますが、根腐れの心配はまずありません。また自生地の環境で乾燥を好む種や、出始めの新芽など、あまり長く湿った状態にすると腐ってしまう種もあるので、湿度を低く保ちたい場合は有効なコンポストです。

デメリットはコンポスト全体が十分乾燥しているか表面を見るだけではわかりにくいところです。水苔の場合、潅水すると毛細管現象により鉢内に水が均等に行き渡るのですが、バークの場合上部は乾燥しているけど、底部はまだ湿っているということが起こり得ますので、乾燥したと思いそのまま潅水し続ければ、根腐れになってしまう可能性があります。なので完全に乾燥した場合と、まだ湿っている場合の鉢の重さを把握しておくことをお勧めします。

もう一つが、株を固定させることが難しい点です。水苔の場合根を包んで鉢内に押し込むように植えると、株がしっかりと固定されて動かないようになるのですが、バークチップの場合だと、植え込んだだけでは株がグラついてしまいます。そのため支柱を立てたり、針金やビニールタイなどで鉢と株を固定させることが重要です。それと湿った状態が長いとバーク自体にカビや虫が付いてしまうので要注意。

バークはメーカによりますが、粒の大きさが何種類か用意されているので、株の大きさや水はけの具合を見て決めましょう。基本的には水はけが良いことから、カトレアなど根が太く、過湿を好まないランに適していると思います。

 

ミックスコンポスト

ミックスコンポストとは、その名の通り数種類のコンポストをミックスしたものです。ただ一般的にはバークチップと軽石がベースで、その他に赤玉土、日向土、ゼオライト、パーライト、竹炭、牡蠣殻などなど…何を使うかや、それらの配合は栽培者それぞれのレシピがあるので正解というものはありません。ご自身の育てている種や環境で調整していくものです。

特徴は、石(土)を使用しているのでバークよりも更に水はけが良い所です。ミックスコンポストはパフィオペディラムやシンビジュームなどの地生ランに使用されることが多いですが、このような種は水はけが良く、また風通しが良いと根の生育も良くなると言われています。では軽石だけで良いのでは?と思ってしまいますが、パフィオペディラムやシンビジュームはバルブを持っておらず水を好む種なので、ある程度バークを混ぜて水持ちを良くしています。そして先述したように、水苔など特定のコンポスト単用と違い、様々な資材を配合することで自分だけのコンポストにできるところが特徴です。

デメリットは、様々な資材をミックスするため、ph値の調整を自ら行わなければなりません。例えば石系資材の分量が多くなると、アルカリ性に傾きやすくなります。

また、それと同時に自分の栽培環境や、育てている種にベストな配合かどうかは、ある程度の経験とテストが必要となりますので、そういった時間を掛けられる方に限られます。「洋ランの土」等の名称で市販されているものもあります。

ベラボン

ベラボンはヤシ(椰子)の実殻を細かく粉砕したコンポストです。粉砕したチップの大きさによってS,M,Lとサイズが分かれています。(写真はS)

ベラボンの特徴は、水を含んだ時に膨張し、乾燥した時に収縮するところです。その点は水苔と共通していますが、ベラボンの場合は膨張と収縮の差が激しく、乾燥している状態から水を含むと1.5倍も膨張します。

なので根が伸びると、収縮した時に隙間に入り込み、根の成長を促します。鉢の中に満遍なく根が張り、水分を効率よく吸収します。さらには通気性も高く根腐れも起きにくいです。また、ヤシの実の繊維は、「亀の子タワシ」の原料になっている事からもわかるように、とても丈夫で、水が掛かっても腐りにくく常に清潔な状態を保つことができます。

次にデメリットと言えるかわかりませんが、通気性の高さから乾燥のしやいので、水分が必要な種類には適しません。根が太くて、本数の少ないカトレアや胡蝶蘭などよりも、デンドロなど根が細く本数が多い種類の方が根張りが良く、適していると思います。それとコンポストの自重がとても軽いので、丈の高い種類などは倒れないように注意が必要です。

その他

その他にも、杉やヒノキなどの樹皮を破砕した「クリプトモス」や、”最上蘭園”という蘭園が開発したシンビジューム向けコンポストの「ペレポスト」。そして今は製造が終了してしまったのですが、アサヒビールが開発した、大麦穀皮を乾燥、圧縮成形し、700℃以上の高温で焼成した炭化物で作られている「オーキッドベース」。

また人によっては木炭や、もみ殻燻炭等の炭系の資材や、他にもブラジルのナーセリーではカトレアのコンポストにナッツの殻を使っていたりと、商品となっていないものも含めて、本当にありとあらゆる物がコンポストとして使用されています。

今回は代表的なコンポスト4種類を紹介しましたが、コンポストとセットで重要なものが、(または着生材)です。コンポストと鉢の組み合わせにより、更にランにとって最適な環境を作ることができます。

次回の後編では、ラン栽培で代表的な鉢の紹介と、コンポストと鉢の組み合わせによる特性について紹介したいと思います。

 

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