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サンシャインらん展2019

初夏のランの祭典「第59回蘭友会らん展inサンシャインシティ」会場レポート

5月23日から5月26日の4日間池袋サンシャインシティにて「第59回蘭友会らん展inサンシャインシティ」が開催されました。

通称この”サンシャインらん展“は「蘭友会 (http://orchidjaos.gr.jp)」主催の1月と、「全日本蘭協会(AJOS)」主催で5月の毎年2回開催され、ラン関連のビッグイベントのひとつ。初夏のサンシャインの見どころはなんと言っても初夏・夏咲きのランが鑑賞できるところです。秋〜春に咲くランが多いせいか、らん展は冬と春に開催されることが多く、夏開催のらん展は貴重な存在と言えます。

それでは展示作品の写真を中心に会場の様子をレポートしていきたいと思います。

この記事の目次

概要

サンシャインシティ(東京・池袋)では、「サンシャインシティは花ざかり!2019」のイベントのひとつとし て 5 月 23 日(木)~26 日(日)の期間、初心者向けから上級者向けまで美しい蘭や珍しい蘭 を展示・販売する「第 59 回蘭友会らん展 in サンシャインシティ ~初夏の蘭を楽しむ~」を開催しま す。

夏季としては、日本最大級の洋蘭の展示会となる本展は、蘭友会の精神である「らんを楽しむことを 通じて人の和を図る」「らんを守る・知る・伝える」ことを趣旨とし、世界中の多種多様な蘭の展示・販 売・講演などを実施する内容盛りだくさんのイベントです。今年は「初夏の蘭を楽しむ」をテーマに蘭友 会会員や、友好愛らん団体などによる幅広い種類・個性豊かな約 1,000 株にもおよぶ蘭の数々の 展示をはじめ、販売コーナーでは開花株や珍しい蘭、園芸資材などを取り揃えた国内外の人気業者 が集結します。また、各種蘭の審査や写真展などを通じて、蘭を様々な角度から知ることができます。 美しい蘭を気軽に楽しみたい方、また多くの蘭に囲まれた至福の時を過ごしたい方には最適なイベント です。

開催概要

名称: 第59回蘭友会らん展inサンシャインシティ ~初夏の蘭を楽しむ~
期間: 5月23日(木)~5月26日(日)
時間: 10:00~18:00(最終日は16:30まで)
入場料金: 無料
会場: 東京都豊島区東池袋3-1 サンシャインシティ ワールドインポートマートビル4階 展示ホールA
主催: 蘭友会
協催: 日本洋蘭農業協同組合(JOGA)
後援: 東京都、豊島区、豊島区教育委員会、(一財)沖縄美ら島財団、(公社)園芸文化協会
特別協賛:(株)資生堂
協賛: マルタ小泉商事(有)
協力:(株)サンシャインシティ、友好愛らん団体

引用:公式プレスリリース

実際の展示風景

サンシャインらん展2019サンシャインらん展2019

さて、会場前に到着しました。今回はワールドインポートマートビル 4階の展示ホールAが会場となっていますが、冬のらん展は同じサンシャインシティでも文化会館の展示ホールで開催されるので、会場を間違わないようにしましょう。

こちらのゲートが入場口になります。

サンシャインらん展2019

一歩中に足を踏み入れると、テーブルの上には沢山の色とりどりのランが並べられています。まず入り口へ入ってすぐの展示は主催の蘭友会の会員の方々の作品たちです。さて作品を見ていきましょう。

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(上段:C. alaorii / 中段左:C. cruziana / 中段右:C. wittigiana / 下段左:C. sincorana / 下段右:C. milleri)

夏咲きのカトレアと言ったら旧レリアなど小型カトレアたちが勢揃い。どれも小さくて可愛らしい花ばかりです。初夏は可愛らしいロックレリアが楽しみな季節。

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(上段:Enc. bractescens / 下段左:Enc. adenocaula / 下段右:Enc. Sweet Garden)

初夏はエンシクリアのシーズンでもあります。コーディゲラのように丸く太いバルブに長い花茎を伸ばす大型のタイプもありますが、小型で花弁も細く繊細なエンシクリアもとても美しいです…。可憐という言葉がピッタリ。

サンシャインらん展2019 サンシャインらん展2019

(L. speciosa ‘Riverside’)

メキシカンレリアのスペシオサ。栽培するのに癖があると聞いたことあるのですが、この特大株!驚きました。ヘゴ板を横に使って着生させています。花も華やかで株のサイズ比べて本当に大きいです。出品者を見てみたら全蘭会長の斉藤正博さん。

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(左:Paph. lowii ‘Mai’ / 右:Phrag. Eric Young)

こちらはパフィオペディラムフラグミペディウムたち。ザッと見た感じワーディーが多い印象。

下の写真は多花性パフィオのローウィの大株でとっても立派ですね。こちらもスペシオサと同じく斎藤さん作で、はちのへ洋蘭園賞を受賞していました。フラグミは渋い色のパフィオと違って、赤・オレンジの花が多く、華やかで彩りを添えてくれます。

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(上段:C. purpurata fma. flamea ‘FN-Beat#1’ / 中段左:C. purpurata f.russelliana ‘La Ponta’ / 中段右:C. purpurata fma. werkhauseri-striata ‘Exotic Orchids’ / 下段左:C. purpurata fma. aco ‘Schusteriana’ / 下段右:C. purpurata var. oculata)

こちらは夏咲きの代表的な原種カトレアのパープラータです。パープラータの花は白の花弁に赤や紫のリップが一般的なんですが、個体差が大きく色の違いやクサビ、フラメアなど同じ品種でも様々な表情が見れます。

パープラータは花も株自体も大きく、一言で表すと”ゴージャス”。今回のらん展でも多くの方が出品されていました。

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(V. Varut Leopard x Charles Goodfellow)

会場でも一際目立っていた、とてつもない大きさのバンダ。全長は2m近くありそうです。バンダ特有の気根の量が多過ぎて束になっており、その様子はまるでラピュタ。ちなみにこちらの作品は蘭友会賞を受賞していました。

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(上段左:Onc. calochilum /上段中:Psygmorchis pusilla / 上段右:Zygostates alleniana / 下段左:Macroclinium dalessandroi / 下段右:Pleurothallis tribuloides)

こちらは可愛いランたちは、すべて同じ会員の方の作品。

小型の着生ランを小さなヘゴや流木に付けているのですが、展示のコンセプトが明確で、このエリアだけ完全に自分の世界観を作り出していましたね。おそらくお手製だと思いますが、木の枝で作ったスタンドも素晴らしい。

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(Conchidium exctinatum)

こちらのコンチジウムはとっても小さい株に、およそ18輪も花を付けていました。コンチジウムはネパールもしくはミャンマー原産のランなのですが、種小名のexctinatumで検索しても出てこないなぁ。写真を見る限りextinctoriumと同じ気も..?

バルブの感じはバルボのようですが、花は小型のデンドロのよう。とても可愛らしい花ですね。

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(Bulb. phalaenopsis ‘Tsukuba’)
こちらは1枚の葉の大きさが世界最大のバルボフィラム・ファレノプシス。株も本当に大きいんですが、こちらは花色が珍しく、アルバなんでしょうか…?黄色味がかった色をしています。
こちらは個体名”Tsukuba”だったので、もしかして去年のつくば蘭展で見た個体と同じようです。

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(上段:Den. wassellii / 中段左:Den. lineale / 中段右:Den. Pixie Princess / 下段左:Den. thyrsiflorum / 下段右:Den. Oharano)

こちらはデンドロビウムたち。一口にデンドロと言っても種が本当に多く、これとこれは同じ仲間なの?と驚いてしまう程多種多様な姿をしています。

その中でも上の写真、旧ドックリリア属のワッセリー特大株。ワッセリーの花自体は可愛らしく小さい花が房のように咲くのですが、こんなに大きくてこんなに花を付けている株を見たことがありません。とても見事でした。

フレグランス展示

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(下段左:Prosthechea chacaoensis / 下段右:Phal. japonica)

こちらはフレグランス展示で、芳香性のあるランの展示をしています。実はらん展のようなエキシビジョンでランの香りを品評するのは日本発祥の文化なのです。

香りにも個性があり、甘いバニラのような香り、スパイシーなシナモンのような香り、柑橘系の爽やかな香りなど様々。ですが、何も人間の為に良い香りを振りまいている訳ではなく、自然の中ではそれぞれの香りによって、それぞれの花に合った虫などのポリネーター(花粉媒介者)をおびき寄せているのです。人間もおびき寄せられたかのように、皆さん鼻を目一杯近づけて花の香りを嗅いでいました。

企画展示: 魅せて楽しむラン

サンシャインらん展2019

こちらは今回のらん展の企画展示「魅せて楽しむラン」のコーナーです。

一般的には温室または、自宅の室内やベランダなどで鉢植えで管理されているランですが、それ以外にもそれぞれの品種に合った栽培方法や、ちょっと変わった鑑賞方法など、様々なランの楽しみ方が紹介されていました。

その中でも目を引いたのは、“テラリウム”型の展示。ここ最近熱帯雨林に自生する植物を中心に、水槽やケース内に擬似的な生息地の環境を再現する「テラリウム」という栽培法が確立されつつあります。

テラリウムなどの栽培方法はLEDなど設備の進歩により、先述した一般的な方法では栽培するのが難しかった品種も手軽に栽培することが可能となりました。こちらのコーナーでも熱帯雨林に生息する小型着生蘭などがケース内で展示されていました。

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(上段:Den. hercoglossum s/a / 中段左: V. falcata & Luisia teres / 中段右:Laelia [Schomburgkia] superbiens)

その他にも寄せ植えや、丸太のような木に複数のランを着生させたもの、小品盆栽用の豆鉢に植えたもの等々、栽培スペースにただ鉢が並んでいるよりも、このように工夫次第でもっと違った楽しみ方ができるなぁと感じました。

植物栽培を趣味にしている方は、InstagramやTwitter、GreenSnapなどのSNSで、育てている植物の写真をアップしている方本当に多いですよね。ただ「咲きましたー」という写真より、こんな風に見せ方も一工夫されている方が、SNSの反応も良さそうですね。

記念展示: 杵島隆と蘭友会

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こちらのブースは、蘭友会相談役で写真家の故・杵島隆氏が来年で生誕100年を迎えるということで、それを記念した展示”杵島隆と蘭友会”です。

杵島氏は広告写真の黎明期を支えた写真家の一人で、洋蘭の写真をライフワークとして長年撮影し続けた方でもあります。世界らん展ではアート部門(以前の美術工芸部門、2018年で廃止)の審査委員長も務められていました。

75年出版の写真集「蘭」は76年日本写真協会賞年度賞を受賞。ブースにも貴重なオリジナルプリントの写真が展示されていましたが、記録写真というよりも美術作品を鑑賞しているような感覚になります。杵島さんの写真を通して改めてランの美しさを気付かされました。

特別企画: 残念なラン”人気コンテスト”

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(中段左:Lepanthes calodictyon / 下段左:Conchidium extinctorium / 下段右:Pleurothallis dilemma)

こちらは開催前のアナウンスの段階で、SNSで賛否両論あった特別企画「残念なラン」のコーナー。

ちょっと変わったクセのあるランをユーモアを込めて”残念なラン”として展示をして、来場者が、その展示されている中の1株を選び、人気投票を行い、そして人気一位の株に投票した方の中から抽選で3名に賞品をプレゼントという企画。

SNS上では”残念“という言葉にネガティブな感情を持ったという方が少なからずいて、じゃあ一体どのような展示になるんだろうかと開催前から興味がありました。

実際の展示内容は、”残念カード”といういくつかの項目が書いてある紙が用意されており、例えばレパンテスの花が「小さすぎて見えない!」とか、プレウロタリスは「変な植物 気持ち悪い(不気味)」など、そのランの特徴に当てはまる項目がチェックがされていました。

おそらく企画の意図として、他のランに比べて特徴的な所やクセの強い所を少し自虐的に言いながらも、ランと一口に言っても色々な種類があって面白いでしょう?という趣旨なんだと思います。

このような展示は、らん展だと意外と今まで無くて、ランの多様性を伝えるにはとても良い試みだと思いました。欲を言えば、一部表記されていたり、蘭友会の方が説明もしていましたが、“なぜこのような残念な形になってしまったか”をわかりやすく、簡単なものでもいいので展示株それぞれに説明が書いてあると、より興味を持ってもらえるのではと感じました。

これからも続けて欲しい企画ですし、今後のアップデートに期待です。

サンシャインらん展2019

なぜこのランが残念なのか説明する蘭友会の方。サンシャインに遊びに来ていて、たまたま会場に入ってきた方も結構いるようで、皆さん興味深そうに展示を見ていました。

※ちなみに残念なラン人気コンテスト1位は、大場蘭園出品のBulbophillum phalaenopsis”だったようです。

 

その他会場の様子

(中段左:C.maxima fma delicata / 中段右:C.ghillanyi / 下段左:C. warneri concolor ‘Santa Tereza’
/ 下段右:L. grandis)

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(中段左:Psychopsis kalihi / 中段右:Milt. spectabilis / 下段左:Enc. Borincana x bractescens
/ 下段右:Restrepia antennifera)

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入賞作品

サンシャインらん展2019

本当にどれも見事で傑作揃いの展示でしたが、最後は入賞作品(ブルーリボン)の一部ですが、気になったものを紹介していきたいと思います。

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副賞:横浜蘭友会賞

Masd. Lym Sherlock ‘No.1’

坂本和子(山梨蘭友会)

自然のものとは思えないほどビビットな色のマスデバリア。こちらのリン・シャーロックは人気の交配種のようですが、マスデ自体高地に自生するランなので冷涼な環境が必要で、このように綺麗になおかつ沢山の花を咲かせるのは本当に難しいと思います。お見事です。

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副賞:相模蘭酔会賞

C. purpurata carnea ‘Cherry’ xsib

五味寿明(東京原種カトレヤ研究会)

こちらはパープラータのカーネアです。carneaとは”肉色“を意味していて朱色のリップが特徴。この時期パープラータは沢山出品されていましたが、この株は花も大きく、純白の花弁にリップの朱が鮮明に出ていて素晴らしい出来でした。

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副賞:全日本蘭協会賞

Ionopsis utricularioides

小佐野滋子(川崎洋蘭クラブ)

オンシジューム近縁属のイオノプシス。花の形はオンシジュームに似ていますが、特徴的なのが淡い紫の花色とハートを逆さにしたような花弁で、小さな花が沢山付く様は、どことなく日本の桜を思い起こします。板付けした小さい株ですが、見事な満開の花を咲かせていました。

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副賞:大阪愛蘭会賞

C.mossiae ‘Goliath’ x self

石井憲治(埼玉洋蘭会)

こちらはカトレアモッシエの大株です。大株と言っても5号鉢くらいにギッチリバルブが詰まっている仕立てで、そこに花がなんと17〜18輪も付いています。しかも花の向きがあちこちに向いている訳ではなく、半弧を描くように咲いていて、開花のタイミングで光の向きを調整したり、誘引しながら満開にしたのでしょう。

selfなので小苗からここまで育て上げるのにどれだけの時間が掛かったのか?長い時間と栽培者の技術が詰まった一鉢ですね。

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副賞:東京都知事賞

Den. treacherianum

小野やよい(蘭友会)

栄えある東京都都知事賞を受賞したのが、デンドロ・トリチェリアナムの大株でした!このデンドロは元々Epigeneium lyonii(エピゲニウム・ライオニー)という名前で親しまれていましたが、DNA解析で属名の変更によりデンドロになったんですが、さらにエピゲニウムの前はデンドロらしく、デンドロ→エピゲニウム→デンドロと戻ってきたようで、なんともややこしい…。

このデンドロはフィリピンという熱帯地域ながら600m〜1100m付近に自生するランで、低温性で水を好むよう。少しクセが強そうなデンドロですが、この株はなんと7本もの花茎を出しています。しかも四方八方に伸びている訳ではなく、一つの面に向かって誘引したのでしょうか?全てこちら側に向かって垂れており、花数も多く作品として美しい株姿をしています。

ピンと尖った花弁に、中央が血のような濃い赤。そこから花弁の先に向かって淡くグラデーションが掛かっていて、思わず見惚れてしまうほど。しかも甘い香りまでするなんて。まさしく東京都知事賞に相応しい作品でした。

まとめ

さてボリューム盛り沢山でレポートしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

今回感じたことは、サンシャインのようなショッピングモールや複合施設、植物園などでらん展を開催すると、普段ランを栽培していない方が、たまたま会場を訪れるということがよくあります。今回の特別展示「残念なラン」などは訪れた皆さんも興味深そうに展示を見ていましたし、積極的に蘭友会の方が説明されていたので、こういった企画があると沢山の方に楽しんでもらえるのではないかと感じました。今後も残念なランに限らず、「へ〜ランって面白いね。一つ育ててみようか。」と思わず手にとって見たくなるような企画を期待しています。

それと冒頭にも書いた通り初夏・夏に開催し、しかもこのような大きな規模で行われる「蘭友会らん展」はとても貴重なイベントです。しかも今回で第59回ですから、長い間運営されてきた「蘭友会」や全国の愛らん団体のご尽力のおかげで、こうして毎年楽しませてもらっていることを考えると、運営に携わる全ての方々本当に感謝です。

来年は60回の節目の年。色々な記念企画があるかもしれません。どんならん展になるか今から楽しみですね。

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